毎朝、毎朝、日本全国で何百万、何千万の人々が、鏡の前に立ち、顔を洗い、歯を磨き、ひげを剃ったり、化粧をしたりします。
こうして身仕度をするとき、私たちは、その日一日中、他人の目にうつる我が身を眺めるわけです。他人に良い感じを与えたいと思うのは人間の常で、身仕度に念を入れるのですが、これには少々虚栄心が伴っているかもしれません。しかし考えてみれば、親切心も入り混じっているといえるでしょう。相手にどんな感じを与えるかということを考えて身だしなみを整えるのは、相手に対する尊敬の気持ちを表すことにもなるからです。
鏡で自分の顔を眺めるのは、一日に数回のことでしょうが、その度に一緒に暮らしている人や、共に働いている人たちのことを自然に考えることになります。
そのとき、他人が自分の顔を見て明るい感じを受けているだろうか、それとも、嫌な感じを受けているんじゃないかと、自分に問いかけてみるのは良いことだと思います。
これはもちろん、容貌が美しいとか醜いとかいうことを問題にするのではありません。顔に表れる心の動き、心の持ち方が問題なのです。顔の表情が、たくさんの言葉よりも的確に、自分の考えを相手に告げるというのはよくあることです。
鏡を見て身なりを整えるのは、もちろん大切なことですが、外見の良さを考えるだけではじゅうぶんとはいえません。鏡にうつる顔をよく眺めれば、様々な心の状態が現れています。例えば、親切な気持ちを持っていれば優しい顔つきになり、不平不満を持っていれば険しい顔つきになります。
毎朝、鏡にうつる自分の顔を注意深く眺めて観察すれば、日々、より良く生きるために努力しようという気持も自然に強くなるに違いないと思います。
*アーカイブスを再収録しました