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生き抜く

コリーン・ダルトン

今日の心の糧イメージ

 英語で会話する友人と、最近こんなやりとりで始めます。

 「ハーイ、どうしてる?」と私。すると、「何とか、生き残ってるわ」と返ってきます。

 最近まで「生き残る」とは、命を脅かすような状況から逃れるという意味だと感じていました。そんな状況から生き延びるには、社会の支援はなく、自分だけで生き抜いていく知識やスキルが必要となります。

 例えば、人が孤島に打ち上げられたり、山で遭難したりしたとき、自ら食べ物を探して生き延びていくといった状況を想い浮かべていました。

 でも友人の言う「何とか生き残ってるわ」という返答は、これとは違うかなと考え始めています。幸運にも友人らは孤立して命を脅かされるような状況にあるわけではありません。それでも、ときにもがきながら進んでいます。人々に囲まれていても、今日の便利な社会の只中でも、人生の暗礁に乗り上げたり、道を見失ったりすることがあるからです。

 してみると、今日「生き延びる」とはおそらく、人々とつながり、コミュニケーションをとり、協力して働くスキルを柔軟に操るということかもしれません。

 現代はテクノロジーが多様な力と知性を提供してくれるので、人と話さなくても用が足りるかのようです。それでも、現実には日々の忙しさ人生における不確定要素や変化を生き抜いていくために、今までにもまして互いを必要とするようになっています。友情について書かれた昔の知恵の言葉が心に響きます。

 「ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い」。(コヘレトの言葉 4・9)

 「なんとか生き残ってるわ。」と、友人は応えます。いつもはじめはため息まじりに。それから、ためらいがちな笑みを浮かべて、私たちはおしゃべりをはじめます。