今年、一人の熟年女性のお葬式をしました。その方の生き方もそうですが、娘さんにしっかりとその生き方が伝わっているのを見てとても感心しました。
その方は、樺太で生まれ、北海道に引き揚げ、そして親族のいる九州へと、小さい頃から転々としました。
その当時、山道を歩いているときなどに不思議と手を合わせて祈っているようなポーズをしていたそうです。それがきっかけだったのか、親戚では初めてミッションスクールに叔父さんが入れてくれたそうです。
都会に出てきて結婚し、その後、本人と四人の子どもたちが洗礼を受け、いつも朗らかに、明るく、上手な料理で人をもてなし、近所づきあいもよく、暮らしていました。長女の方が、「一度も怒られた体験がない」とお母さんを語っていました。
その温厚な人柄故に、色々と人にだまされ、苦労したこともあったようです。また、一番下の子がガンにかかり亡くなられたので、そのお孫さんを引き取って育て、長女のためにと蓄えていた貯金も、そのお孫さんの大学への費用になったそうです。
あるとき、お孫さんの弁当作りや、人の世話で疲れたのか、早朝に脳溢血で台所に倒れました。気がつくのが遅くて、それからは寝たきりになってしまいました。
長女の方も、ガンで弱っていた妹さんの看病を五年間し続け、その後倒れたお母さんの看病を20年、そしてこれからは、最近車椅子生活になった弟さんのために看病を・・と、お母さんの葬儀の後、気持ちを切り替えていました。
お母さんの、他者への愛に溢れる生き方がこうして長女の方に引き継がれ、それぞれ自分に与えられた人生を最大限に生きようとする姿に、人生の輝きを感じた次第です。