▲をクリックすると音声で聞こえます。

共生社会へ向けて

松村 信也 神父

今日の心の糧イメージ

 日本には、昔から"しきたり"という文化があります。"しきたり"とは、大自然に、神様仏様に、ご先祖様に感謝しながら祈ることを行事や作法として伝えられたものです。特に年末年始にかけて、それぞれ異なった行事が全国いたるところ、共同で行われています。行く年、来る年のすべてのものへの感謝と祈りが"しきたり"という形で現在も続けられているのです。

 年末年始を英国で過ごしていた頃、同僚の一人が「日本人は新年を迎えると、去年と違う新しい人に成った気分になります。それは"しきたり"という日本文化が、全てを刷新するからです」と話していたのを覚えています。確かに、英国では、八日間のクリスマス休暇を元日まで楽しみます。しかし、新たな年を迎える特別な行事はありません。ただクリスマスを仲間と共に過ごし、新年を迎える時は、共にカウントダウンするだけでした。文化の違い、習慣の違いでしょうか、英国では、新たな気持で新年を迎えたという実感はありませんでした。

 日本の場合、師走に入ると社会全体が何かと賑やかになり、忙しくなります。その賑やかさ、忙しさは、家の中まで持ち込まれます。町ぐるみ、家ぐるみで年末年始を祝うために、共同作業で準備に奔走します。これが、新年を迎える新たな気持ちへの準備として、それぞれが力を合わせて働く"協働"となり、作業を楽しくさせるのです。教会でも同様に、クリスマスを迎える待降節に入る頃には大掃除、そして飾り付けを楽しく協働で始めました。

 現在、日本では世界各国の人々と共に生活しています。今年こそ、世界の人々と"行く年、来る年"の作業を共に分かち合って、支え合う共生社会への新たな出発の"しきたり"にしませんか。