「誰かが悲しそうな顔をしているのを見るとき、『あの人はまだ、イエスに何かを差し出すのを拒んでいるのだな』とわたしは思います」。
マザー・テレサは、若い修道女に向けた講話の中でそう語った。人間の悲しみは、何かにしがみつくことから生まれる。執着を絶ち切り、すべてを委ねて生きるなら、わたしたちの顔は喜びに輝く。マザーはそう確信していたのだ。
マザーの修道会の三大モットーの一つは「快活さ」だ。出会った人が思わずにっこりほほ笑んでしまうような、喜びに満ちた笑顔で貧しい人たちのもとへ出かけてゆく。くもりのない澄みきった笑顔で、生きることの喜びを貧しい人たちに伝える。それこそマザー自身がしていたことであり、若い修道女に願っていた何よりのことだった。
そのために必要なのが、マザーの修道会の三大モットーの1番目と2番目にあたる「信頼」と「委ね」だ。自分にとって大切なもの、仕事や人からの評価、家族、親友、若さ、健康などが自分から取り去られるとき、それらにしがみつけば、わたしたちの心は不安や恐れ、怒り、苛立ちに満たされ、顔には苦しみの表情が浮かぶ。だが、これらのものが取り去られても、神さまがもっとよいものを与えてくださると信じ、手放すことができれば、その人の顔は静かな喜びに輝く。信じて手放した人の心を、神さまは喜びだけでなく、ひらめきや力、感動など、毎日を活き活きと生きるために必要なすべてのもので満たしてくださる。信頼と委ねこそ、マザーの快活さの源だったと言っていい。
信じて委ねるとき、しがみついているものから手を離すとき、わたしたちの心は喜びで満たされる。日々を快活に生きるための知恵を、マザー・テレサに学びたい。