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親と子ども

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 現代は、共働きの親が保育園や学童保育施設を利用したり、ベビーシッターを活用したりしています。シングルで子育てする家庭も増えたし、養育施設や里親制度も発達してきました。子どもが育つ環境は、多様化の一途をたどっています。

 子育てというと家庭主導の印象ですが、教育も対人経験も、家庭の外で得られるもののほうがはるかに多いのです。家庭でできる最大のことは、親が愛情を注いで子どもの心を安定させ、考える力と生活力を身につけさせることでしょう。

 けれどこの役割は、親だけでなく、子どもを囲むあらゆる大人が果たせるものではないかと思います。保護者も人間ですから、どんな人でも能力には限界があります。だからみんなで補い合うのです。学校は家庭に、家庭は教育機関にとお互いに求めているだけでは、大きな成果は期待できないように思います。

 人生100年と言われる時代、物心ついたときからスマホが普通に存在する世代と、一ドル何円という固定相場で育った年配世代が同じ社会にいるのです。そうした中、子どもたちが直面する大きな問題を見据えて解決するには、家庭の枠を超えた大きな支えが要るのではないでしょうか。

 シングルで子育てする同僚と話し、保育園を取材してさまざまな子どもの事情を聞く経験から、私は、いま社会に必要なのは、大人全員が「親」の心を持ち、未来の世代を育むという意識ではないかと思うようになりました。インターネットによりあらゆる垣根が消えている中、家族が社会、社会が家族でいられたら。みなが家族の単位を超えて若い世代を育てていけたら、と。

 そうやって、あらゆる年齢の人が心行くまで力を発揮できる「和」の社会を作れたら、と思うのです。