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ひたすら前に

小川 靖忠 神父

今日の心の糧イメージ

 わたしたちは、欲するか否かに関係なく、たくさんの人々の中で生活しています。また、そうすることによって、お互いの成長のためにも大きなプラスになっているのです。一人ひとりが、人としての成熟のために、必然的なことであると言えるのではないでしょうか。

 思い起こせば、わたしは、若い頃は人前に出て行くのが、とても苦手だったなということを思い出します。小学生の頃から、みなの前で何かをさせられるのが、嫌でしょうがありませんでした。特に嫌だったのが、みなの前で歌を歌わせられることでした。なんで自分が指名されるんだろうと、音楽の時間になると先生と目が合わないようにしていた記憶があります。

 こうした傾向は、そうそう簡単になくなるものではなく、大学生になってもなくならず、このままでは司祭になって奉仕するなんてありえないな、と思うようになりました。なんといっても、人前で話をするなんて、当時としては考えられないことです。

 そこで取り組んだのです。自意識過剰になることが、人前で嫌になる原因ではないかと考え、だったら、日頃から自意識することに慣れていったらどうだろうと、浅はかな訓練に挑戦したのです。それは「歩く」ということでした。足を交互に前後して歩いている「自分」を意識してみるんです。そうしたら、「バカみたいなことをしているな」と思っている自分に気づくんですね。

 その後、多くの体験を重ねて、人前で何かをすることが、少しずつではありますが、できるようになってきたのです。

 まさに、人の間にあって変えられていったのでした。「ひたすら前に」それは、自分の居場所の確認ではないでしょうか。