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クリスマスのメッセージ

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 イエス・キリストが馬小屋で誕生すると、それを聞きつけた羊飼いたちが挨拶にやって来たと聖書は伝えている。もしイエスが生まれたのが壁で囲まれた大きな宿屋や宮殿だったとしたら、当時もっとも卑しい階層とされていた羊飼いたちは、その門の前まで来て引き返したことだろう。イエスが馬小屋で生まれたことには確かに意味があった。馬小屋で生まれたからこそ、イエスは貧しい人々に神の愛を伝えることができたのだ。

 わたしたちはつい、人から高く評価してもらおうと思って自分の周りに権威や名誉などの壁を張り巡らそうとするが、その壁は同時に、自分と周りの人たちを切り離す壁でもある。自分の財産や地位学歴などを誇れば誇るほど、「この人は、わたしとは違う世界の人だ」と思って距離をおく人たちが増えてゆくのだ。そんな人間の心をよく知っておられる神は、イエスをあえてまったく無防備な、貧しい馬小屋に誕生させた。そのこと自体が、人類に対する一つの福音、喜びの知らせだと言っていいだろう。わたしたちのもとにやって来られた神は、羊飼いたちでも簡単に近づける神、どんな人でも気後れせずに近づける神なのだ。

 赤ん坊であるイエスには、権威も、名誉も、財産もなかった。イエスの周りには、人々を遠ざける壁が何一つなかったと言っていい。そのことは、イエスがすべての人のために遣わされた神であることを証している。たとえ社会の片隅に追いやられ、財産を失い、人から馬鹿にされたとしても、暖かく受け入れてくださる神。それが、イエス・キリストなのだ。わたしたちは、自分の周りに壁を作りすぎていないだろうか。すべての壁を取り除き、すべての人に開かれた自分でありたいと思う。