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ホッとするとき

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

 「話を聞いてほしい」という電話が、東京在住の卒業生からかかってきました。そして10年ぶりに会うことになりました。仕事や家族についての悩みでした。彼の近況や考えに耳を傾けて、私の経験してきたことを話して、1時間ほどで別れました。その晩メールが届きました。「"よい決断だったとなるように、努力することが大切だ"という先生の言葉が、心に残りました。よく考えて、どうするかを決めます。ありがとうございました」。良いアドバイスができたかどうかはわかりませんが、少しでも役に立てたとすれば、嬉しい限りです。

 在学中さまざまなトラブルがあって、中途で退学した生徒が、突然校長室を訪ねてきてくれました。やんちゃをした出来事も、時間を経た今となっては、懐かしい思い出になっていることに気づきました。「先生、俺もっと勉強したらよかった」としみじみと話すので「勉強は一生もんや。今からでも遅くない。資格を取って、しっかり仕事しよう。君は昔から勘がよかったし、何より人に好かれる性格や。きっとうまくいく」と励ますと、にっこり笑って「わかった、頑張ってみる」と言って帰っていきました。

 まもなく教師生活40年を迎えます。この間、辛いことが幾度となくあったのは事実です。しかし、それに勝る嬉しいことがあったのも間違いありません。子どもの成長には時間がかかります。農家の人が作物の実りを待つように、漁師が網を仕掛けて大漁を待ちわびるように、教師や親は、子どもの成長を願いながら待たなければなりません。

 思春期と呼ばれる中学高校時代の子どもたちと日々接しながら、教え導く役割を与えられている幸せを、しみじみと感じています。