たえず1歩前に

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

 戦前・戦中、軍事教練を受けた高齢者ならば、誰もが知っていることですが、敵の情勢を密かに探る兵隊のことを「斥候」と言います。

 戦後70年以上経った今日、多くの若者がこの「斥候」という言葉に触れることもなく、知らないまま過ごしてきたに違いありません。「斥候」とは、敵軍の動静・地形などを、ひそかに探り監視するために、部隊から差し向けられたパトロール隊で、軍隊の移動に先駆けて「たえず1歩前に」配置され、進行方面の状況を偵察しつつ、敵を警戒する重要任務を負っています。

 この斥候の任務・役割、その存在価値は、戦いの場でもあるビジネスの世界でも、日常の個人生活の中でも共有でき、生かすことができる極めて重要なモーメントであります。日常生活の中での「斥候」とは何を意味するのか。ある意味で戦いの場でもある日常生活ですが、たえず1歩前にある危機や危険を察知し、警戒し歩む必要があり、そこに斥候の必要性が生まれてきます。斥候は、必ず、部隊に先駆け、「たえず1歩前方に」位置しています。その任務は、基本的に偵察、攻撃、追跡の3つとされています。この中でも特に偵察活動は危険ではあるものの、現在の状況を確実に把握するために必要であり、地域の支配権を左右する重要な活動であります。斥候部隊は第一線の最前線部隊として、敵と接し戦うこともあり、本隊へ敵の情勢を報告し、部隊全体の戦闘展開を支援するという多様かつ極めて重要な役割を担っています。

 毎日の生活に、だれしも有能な斥候を備えおきたいものですが、いまの時代、この斥候とは、何を意味するのか。興味ある課題であります。

たえず1歩前に

古川 利雅 神父

今日の心の糧イメージ

 「はじめのい〜っぽ。じゃんけんぽん...。」これは子どものじゃんけん遊び。このようにみんなで唱えて全員でまず1歩進み、次にじゃんけんに勝った人が決まった数だけ進んで、再びみんなでじゃんけん、その繰り返し。勝った人はどんどん先に。1番先の人から見ると、他の人は皆後ろにいる様に思われますが、スタートから考えると、どんなに少なくとも1歩、そして絶えず前へ進んでいるわけです。

 先へ、先へ。戻ることなく、引き返すことなく、ただひたすらにどんどん先へ進んでいく。これがこの遊びの特徴でしょうか。私たちの日常生活の事や人生を考えてみると、なかなか先に進めないこともあるでしょうね。また進めないどころか、最初の1歩さえ踏み出せずにいることもあるのではないでしょうか。

 でもはじめの1歩を踏み出すことができたなら、それはその人にとって大きな1歩です。他の人から見たら、取るに足らない1歩の様に見えても、大きな1歩。そしてその後の歩みを人と比べた時、ずっとずっと後ろの方にいるとしても、少しずつ少しずつ絶えず1歩前へと進んでいる姿がそこにあるのではないでしょうか。

 自分ではその様な姿を疎ましく思ってしまうかも知れませんが、目には見えないけれど、私たちを近くから見守っておられる神様はきっと暖かく見守っておられることでしょう。声は聞こえないけれど、がんばれ、がんばれと励ましていて下さるのではないでしょうか。そのやさしい暖かな励ましを想うなら、私たちは1歩を踏み出す勇気、絶えず前へと歩みを進めていく力をいただくことができるでしょう。

 今日もその目に見えない神様の見守りに支えられながら、新たな日をご一緒に歩んでゆきましょう。


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