たえず1歩前に

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

 「今日のことは今日のうちに、余力があれば明日のことも先取りする」というのは、五島の母が子どもたちに口すっぱく言っていたことである。

 「イエズスさまはさ、今日の苦労は今日1日で足れり、明日のことは思いわずらうなっち、言うておられるばってん、やっぱりさ、わたしは、今日のことをした後、少しでもさ、明日のことばしておきたかとよ。明日、何が起こるかわからんけんね。明日、また、誰かが相談にのってくれろと駆け込んで来たらさ、時間がとられるけんね。他人の話ば十分聞いてあげたり、その人のために何かしてあげんばいけんごとなったらさ、時間がいっぱいいるけんね」というのが母の言い分であった。

 実際、母は和裁をして家計を助け、毎日、泊まり客もあるので、1日24時間をいかに有効に使うか、心をくだいて暮らしていた。

 それで夜なべをして、明日の分を先取りするのを日課としていた。

 しかし、晩年の母は、「イエズスさまはやっぱりさ、良かことば言うてくれとる。こげんして、今じゃ他人の世話はできん、逆に他人に世話してもろうてる身になってからさ、今日1日の苦労は今日1日で足れり、明日のことは思いわずらうなっちいうことばが深く身にしみるとよ。こげんなわたしばやさしくかぼうてくれちょるごとあって・・・」と言って涙ぐんでいた。

 聖書の言葉は、その人の年齢や環境によって感じることは異なることもあるだろう。

 私も夜、洗濯できない体調の悪い日は「今日の苦労は今日1日でいい、明日のことは明日考えよう」と神さまに祈りつつ眠ることにしている。

たえず1歩前に

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 青春時代、日々の不安感と絶望感に襲われ「何とか、この心境から抜け出し、希望に輝く日々を送らせて下さい」と、神様に祈りました。たえず1歩前に進めるようにと、手当たり次第に本を読み、先輩の知恵を借り、努力するのですが、あの頃の焦りは相当深刻でした。

 人には「たえず1歩前に進みたい」という向上心があり、色々の学問や文化芸術等の向上に貢献している考え方ですが、まてよ、という面もあります。

 人間は、緊張と緩和のバランスがとれていませんと、直ぐ病的なストレス症状が出てきます。この現象を古代の人々も気が付いていて、どうしたら厳しい人生での病的なストレスを解消出来るか色々考えます。現代の大脳生理学も充分な睡眠、歌と踊り、遊び等を生活に取り入れだしています。心理療法も、治療の前に、充分な睡眠をとっていない場合は、その対策から対処方法を模索していきます。

 さて生身の人間を観察していきますと、不思議な現象を目にします。それは人間には自然治癒力という素晴らしい能力がある、という事実です。この力を覆い隠しているのが病的な不信感、罪悪感、劣等感、混乱感です。これを知恵ある方法で、その人に相応しい方法で対処していきますと、その人の自然治癒力が発露されていきます。無理をしなくても、その人の自然体の中で、日常生活の流れの中で、美しい調和を保ちながら、一歩まえに進んでいくようです。健康的な緊張と緩和を維持しつつ、明るく元気に爽やかに人生が流れていきます。

 人の身体は神の神殿、全知全能の神様、愛そのものである神様が与えてくださった、自然治癒力という能力を発揮できる知恵を、祈り求めながら生きていきたいものです。


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