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天の国の鑑

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 天の国の鑑、ということを考えた時に思い浮かぶのは昔友人からもらった美しい絵はがきです。それは、美しいけれど年老いたマリア様が、すこし悲しそうな表情をして、冠をいただいている絵です。この絵はそれまで見たことのないマリア様の姿でした。

 ギルランダーヨという画家の描いた絵の一部分で、フィレンツェの教会にあるもののようです。その絵はがきをイタリア土産にくれた友人のことをとてもいいなと思いました。その絵はがきは、今でも簡単な額に入れて、本棚に飾ってあります。何か、そこには、天国にたどり着くまでのマリア様の長い道のりが見てとれるような気がするのです。画家が彼女をあのように表現してくれたことをとても素敵だと思います。

 若くて美しいだけのマリア様だけでなく、大変な困難を越えてあそこに到達したあの方が思われます。確かに素晴らしいことをしているのだと信じながらも、息子にあのような死に方をされた母親のことを考えると、気が遠くなりそうです。どんなに悲しかっただろうか、どんなに切なかっただろうか、と思うのです。

 今の世界で、いろんなことで、息子や娘のために苦しんでいるお母さん達は、きっとみんなこのマリア様のお仲間ではないかと思います。悲しみの果てに天国に到着した時に、きっと特別なごほうびをいただけるに違いないと思います。

 世の中には、なんと悲しいことがたくさんあるのでしよう。そして、そのどんな場合にも、お母さん達は、みんなそれを、心の中で自分の責任だと思ってしまうのです。でも、マリア様が天国で待っておられると思うと、すこし勇気が出ませんか。

 あの方も同じ道を通ってこられたのだと。