祖母が亡くなって、喪中のご挨拶を出した時、お悔やみの御返事を頂いたことがあった。高名な詩人からのおはがきで、「大切な方が旅立たれ、お寂しいことでしょう。」と書かれていた。何だか、祖母が長い旅行で留守にしているかのようである。ふっと気持ちが和らいだ。そうだ、きっと祖母の魂は、生前の思い出の場所を巡り、それから明るく長い旅に出るのだろう、と思うと、悲しいことに変わりはなかったが、頭上で空が広くなったようであった。
私たちはまだ地上の旅人である。日々の旅に苦労し、生きることに精一杯だ。だが、肉体が地上の旅を終えたあと、魂が新たな旅に出るのだ、と考えると、驚くほど心が落ち着く。やはり私たちは、永遠と呼ばれるものに結びつけられていたいのだろうか。
魂の静かな存在を自分の中に知るだけでも、生きることが楽になるようである。