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人生の教訓

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

人間がこの世の中で生きて行く間に、その生き方に指針を与え教え導く言葉を人生の教訓とするなら、尊敬する人の言動、読んだ書物から強く心を動かされた事柄、映画や芝居に登場する人物やストーリーから、私達は人生の教訓を得ているのだと思います。

転ばぬ先の杖という言葉があるように、先に教訓を学んでおけば失敗が無い安全な人生を歩む事が出来るのでしょうか。いいえ、人生はそんなに簡単なものではありませんし、一人ひとり全く異なる人生を歩んでいるのですから、人生の教訓と思える事柄は異なるはずです。

画家としての人生を50年近く歩んできた私にとっての教訓は、ほとんど過去の時代を代表する、数名の画家達の人生と作品から得られるものです。ことに思うように筆が運べず、制作のスランプに陥った時には、歴史上有名な作家の制作年譜をたどります。どんな名手でもこの時期がスランプと思える時期を発見できるものです。すると勇気がわいてきてその作家を身近に感じ、一緒に乗り越えるつもりで丁寧に画集を見ていく内に、いくつかの制作のヒントが見えてくるものです。

恐らく大抵の人が自らの人生の教訓とするのは、自分と似た職業や環境の中で、尊敬する生き方をした先人の言葉なのだと思います。

その上で、どんな職業であろうと性別も国籍も超えて、普遍的な教訓を得られるのがキリストの御生涯であり、聖書に書かれているキリストがして下さった譬え話の数々です。

特にゲッセマネでの祈りにある「しかし、私の願いではなく、御心のままに」との主の言葉(マタイ26・39)と「10人の乙女」の譬え話の最後「目を覚ましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないのだから」(同25・13)は終末へ向かう時の最高の教訓です。