猫用のミルクを買い、小さな口にあうプラスティックの哺乳瓶もそろえた。ミルクは1日に5回与える。母猫の代わりに、湿ったティッシュでお尻を根気よく刺激して排泄も促す。連れてきたばかりの日は、空腹で死にかけていた子猫が3日もすると元気になり、遊びたがるようになった。夫が仕事から帰ると子猫は夫の肩によじ登って甘える。夫には内緒だったが、私がこのトラ猫を心から好きになるまでには2年かかった。毎朝、自分に言い聞かせて世話をしていた。「これはよいこと。必ずよい結果になる」と。
そして、いつの間にか言い聞かせなくてもよくなった。猫は私の友達になり、触ることも世話をすることも喜びに変わったからだ。今では鳴き声で、彼が何をしてほしいのかがすべてわかる。私が力を落としている時は、まるで賢い犬のようにそばに来て顔を近づけ慰めてくれる。
たかがペットの話だが、疲れて帰る夫が喜ぶのを願って始めたことなので、勇気を出してよかったと思った。
苦手な事に取り組むには勇気がいる。