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岐路に立つ時

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

私が卒業した中学は、卒業すると女子の3分の1は就職、3分の1は商業高校や美容学校など、残りの人たちは普通高校へ進学しました。中学卒業生は金の卵と言って引く手あまたでした。今から50年ほど前のことです。

級友たちが進路について相談したり、決めていくのを私はただ遠くから眺めていました。私は小学生の頃、「アルプスの少女ハイジ」という本に感動し、ハイジのように生きたいと決めていました。

ハイジのように生きるには、一体どうしたらよいのだろう。自然と共生して生きるには、何をすればよいのだろう。農業を志せばよいのか。そのために何をしたらよいのだろう。いくら考えてもよくわかりません。私は両親に相談しました。

「お父さん、お母さん聞いてください。私は私の夢を実現するために、農業をしたいと思っています。でもどこへ進学したら良いのか分かりません。どうしたらよいのでしょう。」

両親は私の考えを聞くと、言いました。

「そういう時はね、まずは、普通高校へ進学したらよいのだよ。3年間、自分と農業のことを考えたらどうだい。」

私は就職し働き始める友達がいるのに、私だけ結論を先延ばしにしても良いのか迷いましたが、両親の薦める通り、普通高校へ進学しました。

高校生活はとても楽しいものでした。勉強だけでなく音楽を楽しむ人、文学を志す人、建築を目指す人もいました。将来何をするか、友人たちの話を聞いて、視野が広がりました。3年後、私は農業大学へと進学し、日本と世界の農業について考えることにしました。

中学卒業、すなわち義務教育の終了という人生の岐路に立った時、高校の3年間でじっくり考えればよいのだよ、という両親のアドバイスと応援は、今でもありがたいものだったなあと感謝しています。