日本でよく見られるセミは六種類あること、そしてその鳴き声もだいたいの子供たちはよく知っている。ただ、会場の横浜の場合、クマゼミは生息地の北限であり、その鳴き声はときどき聞くことができるが、抜け殻はめったに見つけることができない。
子供たちに貴重なクマゼミのぬけがらをプレゼントするために、大人のスタッフは事前に三浦半島の城ヶ島まで採集にいく。
しかし、別の地区のスタッフから異論が出た。「公園でみつけたセミの抜け殻の標本をつくればいいのであって、そこで見つけられなかったセミの抜け殻をわざわざ別のところで見つけて与えるというのは科学精神にもとるのではないか」という。
運がいいとセミの脱皮に出会い、その神秘的なシーンに子供たちも感動する。地中生活に比べて地上生活の短さ、はかなさを知っているだけにその感動もひとしおである。
ある子がいった。「地中での幼虫時代がセミには不幸なのかな。地上での生活だけが幸福なのかな」と。セミの生き方にはかなさをみるのは人間の勝手な見方であって、セミは必ずしもそう感じていないかもしれないと気づかされた。