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平和を考える

高見 三明 大司教

今日の心の糧イメージ

わたしたちは、「平和」について考える時、まず「平和」とは戦争のない状態のことだと考えます。それは確かに正しい答えです。今なお世界中で戦争と紛争が起こっており、兵士だけでなく、多くの一般市民、とくに子供、女性、障がい者、高齢者が犠牲になっています。残された人々も、肉親や親類や友人とのきずなを引き裂かれ、心に大きな深い傷を負っています。彼らの平和はぼろぼろの状態だと言えるでしょう。

しかし、平和は戦争のない状態だけでしょうか。暴力や殺人など平和を乱す行いは、わたしたちの日常生活の中でも見られるのです。ですから、平和は、一人ひとりの人間の心の平和、そして人と人との平和な関係にこそあると言わなければなりません。この平和な関係は、互いに相手を人間として尊敬かつ信頼し、自由な心で正しく行い、真実を語り、自分と同じように相手を愛することによって作られます。それは、暴力や武器によっては決して作られず、むしろ破壊されます。後は暴力の悪循環が生まれるだけです。武力による抑制も平和の条件ではなく、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則を守るべきなのです。

このような基本的で重要なことをすべての人がよく知り、知るだけでなく平和を愛し好む精神を身につける必要があります。そのため、子どもも大人も、すべての人が絶えず平和について教育を受け、学ぶことが大切です。

パキスタンで、女性の教育を訴えたためイスラーム原理主義者によって銃撃された少女がいるのはご存知でしょう。彼女は、平和をつくるためには教育が必要であると訴えています。そして一冊の本、一本のエンピツ、一人の生徒、一人の先生がいれば、平和をつくり始めることができる、と強調しています。