4年前、北海道へ移住して迎えた初めてのクリスマスは、期待していた通りホワイトクリスマスでした。12月の半ばから降り始めた雪は、クリスマスのころにはすでに根雪となるほど降り積もっていました。雪が降った朝、森の中は一面真っ白なクリスマスツリーなのです。
さて、万葉集4500首最後の和歌に、大伴家持が書いた次の一首があります。
新たしき年の始めの初春の
今日降る雪のいや重け吉事
意味は、元旦に立春が重なりめでたいことです。その上に豊作のしるしである雪が降りはじめました。降り積もる雪のように、良いことが、幾重にも重なりますように。
日本では、古来より雪が豊作のしるしと喜ばれていたのです。それにはわけがあります。雪が雲の中で作られるとき、空気中の窒素を取りこむからです。その雪が地上で溶けて土にしみこみます。いわゆる空中窒素の固定です。窒素は植物の養分になるのです。さらに雪は、天然のダムとなって、作物が生育するための貴重な水源となります。
私が憧れていたホワイトクリスマスとは、豊作を現わすしるしでもあったのです。