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根っこ

岸本 景子

今日の心の糧イメージ

 ひとは、ことばによって生きています。良いことばも、悪いことばも私たちは、これまでに出会ったさまざまな言葉を吸収しながら、今ここに存在しています。

 そしてそのことばは、私たちの心の状態にも深く関わっています。
 プラスのことばに満たされると生きる力が湧いてきます。けれど、マイナスのことばに満たされると、生きることそのものに迷いが生じてしまいます。

 私が生まれたとき、男の子の誕生を待ち望んでいた祖母から「がっかりされた」と聞かされたことがありました。小学生だった私は、幼くてその意味がわかりませんでしたが、成長するにつれてそのことばは私の内側に根を張り、やがて生きる力を奪っていきました。その後、どれだけ別のことばに触れても、なかなか心に定着しませんでした。

 このままでは、暗闇に支配され、存在さえも消し去ってしまう。私は救いを求めてカトリック教会の門を叩いたのでした。

 ある日、「古いものは過ぎ去り、新しいものが生じた」(2コリント 5・17)という聖書のことばと出会いました。その瞬間、自分の内側に新しいいのちが宿ったようでした。もし、このことばと神様に出会っていなければ、今ここに私は存在していないかも知れません。

 いつしかそれ以降の時間を「ロスタイム」(本当なら無かった時間)だと思うようになりました。映画をつくり始めたのも、そしてこの原稿を書いていることも、すべてその中にあります。

 それまで私の中に根を張っていたことばに代わって、新しいことばが根付いたのでした。その根から新しい生命が宿り、枝葉がのびています。
 このロスタイムが、誰かの心を少しでも軽くするひとときにつながることを願っています。