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ともに生きる

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

 東京から気候の温暖な地に引っ越しをして2年が過ぎようとしている。ゼンソク気味の私は、医師から気候の良いところで暮らすように勧められていた。ふとしたことからバタバタと行き先が決まり、今の地に住み始めている。しかし、仕事は、ほんの2週間働いてはドクターストップがかかり、養生することになった。しかし、回復すると再び働き始めては3日と続かず、仕事をやめた。さらに塾で働き、こちらは1年以上続いたが、体調が悪くなってやめた。

 ある日、病院で気分が悪くなり、検査をした結果、甲状腺の病気であることがわかった。ゆるしの秘跡を受け、病者の塗油の秘跡を受けた。司祭のおすすめは、「あなたが何もできないということを神様は喜んでもおられます。どうぞマリア様の取り次ぎによって元気になってください」というものだった。

 時を同じくして友人から「マザー・テレサの会のシスターたちには、祈りと犠牲でしっかり支える病気のシスターがついているのよ」というメールをもらった。

 ともに生きるためには、他の人ではなく、何もできない自分自身とともに生きることから始まる。花を咲かせ実のなる人に養分を送る存在になる決心が必要だ。

 十字架上のイエスを見つめると、何もできないと嘆く私に、「愛に満ちあふれた沈黙」が静かに流れ出してくる。長い間、私は活動と結果を求める目障りな存在だったかもしれないと思う。

 しばらくゆっくり過ごすように言われた私は、小高い丘の上にあるアパートから一分のところにある聖堂に行って祈り、その後、ゆっくりと湖の方に歩いていく。湖は生きとし生けるもののリビングルームだ。湖の杭の上で昼寝をしている水鳥を起こさないようにと、足早に歩く。