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共にある

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 私が学生だったとき、友達に誘われてマンドリンクラブに入りました。マンドリンクラブには、私が習い始めたフルートのパートがあったこともその理由の一つでした。

 ところが、1年ぐらい練習してもいっこうにフルートの音が良くならないので、むしゃくしゃする日が続いた頃、指揮者の先輩からこう言われました。「松浦くん、君、音が汚いから、音の出ないパートに移ってくれないか?」と。

 そんなパートって何だろうと考えていたら、その先輩が「音の出ないパートって何だと思う?指揮者だよ。フルートが吹けなくてつらいけど、音をまとめるのも、結構楽しいよ」と言って、私を誘ってくれたのです。

 それで、この先輩に指揮の指導を受けていましたが、3ヶ月後に小さなコンサートが成功裏に終わった直後、「こんなクラブやってられないよ。俺、クラブ辞める」と突然先輩が言い始めたのです。私がおろおろしていると、先輩皆が、「松浦くん気にするな。あいつはコンサートが終わるといつもああなんだ。」と悠然と構えているのです。

 案の定、先輩達がいうように、1ヶ月も経たないうちにその先輩はクラブに戻ってきて、定期演奏会のために指揮者として頑張り始めました。

 後に、カウンセラーの人から「一つの夢を追い求めて個性の違った人々が共に歩んでいるとき、人間はとても幸せな一体感を感じるものなのだ」と言う話を聞きました。あの先輩も、目標としたコンサートを終えると、仲間との一体感も薄れて寂しさを感じてしまったのだなあと納得しました。

 このことは、共にあることの喜びを充分味わうためには、共に目標を持ち、共に夢を見ることが大切だということを私に思い出させます。

 若かりし頃の貴重な経験です。