「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。

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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。

真の強さ

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 父や母に対して、私はどれほどの恩返しをしたのだろう、と思うと、とても辛くなります。大切に育てられたにも関わらず恩返しをした記憶があまりないからです。

 記憶にあるのは優しいお母さん、少々苦手ですが、いざという時はとても逞しく私を支えてくれた父親を思い出しては、後悔している私がいます。

 さて、両親に対してばかりでなく、妻や友人、恩師、大勢の私の教え子さんたち、この人々に対して私が本心からの恩返しを、どれほどの誠意をもって対処してきたかを考えると、神様の前でゆるしを請いたくなります。最近、これではいけない、本気で恩返しをしないと天国に行けないなあ、と悩んでいます。

 こんな心境でのある日、珍しく聖書を開いてぱらぱらとページを繰っていましたら、ヨハネ福音書の4章、サマリアの女とイエスが井戸端で会話している場面が飛び込んできました。

 この女性は、当時、色々のことで深い悩みに陥っていたようです。

 この出会いの場面は非常に奥深く、味わい深い物語ですので、皆さんにも是非味わっていただきたいのです。

 私の場合、高校生時代に受けた洗礼の頃から始まり、その後50年間何度も読みかえし、この物語の奥深い意味を考え、思索しています。

 私の、人に対する愛情不足の原因、神様に対する私のあり方、そのようなことを考える時、私に真の強さがいかに不足しているかに思い至ります。そしてまた、自分の弱さを素直に受け入れていない自分の愚かさ、全知全能の神様を信じきる力の弱さをも、しみじみと感じることができる私が生まれてくるようです。

 何度読み返しても、この場面は私に生きる希望を与え続けています。