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担い手

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 幼稚園に入ったとき、「これから毎日、一人ずつお当番さんをやってもらいます」と先生に言われ、戸惑いました。子どもの私に「やってもらいます」と大人が言うようなことができるものなのか、不思議だったのです。でも、「お当番さん」になるのは、私も含めて全員が同年齢の子どもです。いったい、「お当番さん」は何をするのでしょうか。

 「お当番さん」になると、教官室に直接先生を訪ねて出席簿を受け取ったり、遊んでいるときと違う凛とした声で号令をかけたりするので、その日は普段と違う私の姿を自分自身で見ているような、少し特別な気持ちになるのでした。

 担い手と聞くと、農業や政治など大きな部門や、将来の社会を担う世代といったダイナミックなイメージを持つことが多いかもしれません。

 しかしその前に、何かを担うことの根底にある心構えや行動規範は、子ども時代に経験する当番や、もう少し大きくなると日直、生徒会の役員やクラブの部長など、生活の中で責任を持つ経験を通して身についていくのではないでしょうか。

 責任感と行動力、ときには交渉力を必要とする「担い手」の仕事は、クラスの当番から一国の大統領までさまざまであると同時に、自分自身がそれを受け持つという覚悟においては同じでしょう。

 ここで思い出すのが、「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さなことに不忠実な者は、大きな事にも不忠実である」(ルカ16・10)というイエスの言葉です。

 どんなことであれ、これを自分が担うのだと決断すると、気概が生まれ、日々が充実してきます。言われたからやるのではなく、自分から担う心は、生きる気力の源になるのではないでしょうか。