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村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 昨年秋のことです。ちょうど個展が終了し、久しぶりにゆっくりした気分で新聞を開きました。
 一面に仲代達矢(なかだいたつや)氏死去のニュースがあり、驚きつつ紙面をめくり、次の二面全体を占める写真に思わず声を上げました。

 タイトルに「駆け抜けた巳年(みどし)の秋」とあって青森県の岩木山の麓から八合目まで続く津軽岩木スカイラインを真上から撮った写真で、紅葉が雪化粧し始め、紅い麓から白い山頂へカーブが69回も続くという蛇のように曲がりくねった道路が走る大胆な写真でした。

 開通60周年になるという自動車専用の有料道路で全長9.8キロとのこと、数字繋がりで、先の仲代達矢92歳という記事が蘇り、彼を俳優座養成所時代から知っていたので、思わず人生を重ねてしまいました。

 一方で私の好きな絵画作品に東山魁夷(ひがしやまかいい)先生のシンプルな「道」という絵があります。樹々に囲まれた平原の画面中央に真っ直ぐに続く一本道が描かれ、それはその時の先生が決意を示された作品といわれています。

 曲がりくねった道に例えられる人生は、年齢の節目や予期せぬ事柄や人物との出会いによって成功や困難に遭遇しながら進むので、始めは予想もしていなかった職業についたり、生活の拠点が変化したり、人間関係も多彩でしょう。

 一本道の人生は、アスリートのように子供の頃から目指すものがあってひたすら努力して目標に向かう人生です。でも霧が掛かって突如前方が見えなくなったり障害物を乗り越えたり、時には回り道を余儀なくされることもあるでしょう。

 人は終末を迎え、どちらの道を来たかを察せられるものです。歩むのでも車でもどちらにしても、夜は足元を照らす光があればと思います。

 この光こそ神、「心の(ともしび)」なのです。