大きな壁

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 私の友人に、手話をする神父がいました。彼は、「手話で伝えるためには、不思議と自分が何を言いたいかをはっきりさせなくてはいけないので、知らない間に言葉が簡潔明確になっていく」と、自分の成長にとても役に立っていることを語ってくれていました。

 そのことを先日、長崎の五島を教会巡礼する機会があり、再発見したのでした。

 今回の五島巡礼は、初めて行く人が多いこともあって盛り沢山の殉教者の巡礼地を駆け足でまわりました。初めに全体を見ることで、その後行きたいところに再び訪れることが出来そうなので、これもありだと思います。

 ところが、定期船や教会の予約時間の関係から、2回ほど「巡礼地での礼拝式を30分以内で終えて下さい」と添乗員さんから言われてしまいました。

 この頃、私が巡礼に付き添うときには、絵本を持って行くようにしています。肌に感じる信仰を求める巡礼だから、肌で感じるポイントを、絵本を通して深みを示したかったのです。

 それで、先ほどの手話の話を思い出しながら、今日の聖書と巡礼地の情報とを合わせて、どこに焦点を合わせたらよいのか、そして絵本はどのようにそれらを結びつけるのかの作業が始まります。

 前もって考えてきたメッセージをゆったりとした中でより明確に短く提示するにはどうしたらよいかと心が動きます。すると「殉教は自分の奥深い本心との関わりではないか」「殉教者の心を生きることとは、私の人生の道筋を考えることだ」といった、今まで思いも付かない視点を深めることができ、それを提示することが出来ました。

 大きな壁は、私に新たな一歩を踏み出させるものでした。

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