時のしるし

熊本 洋

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 「時のしるし」Signs of timeとは、なにか。意味深長です。

 聖書に、2千年前、イエス・キリストが当時の人々に告げた次のような言葉が残されています。

~~イエスはお答えになった。「あなたたちは、夕方には、『夕焼けだから、晴れだ』と言い、『朝焼けで雲が低いから、今日は嵐だ』と言う。このように空模様を見分けることは知っているのに、時代のしるしは見ることができないのか。」~~ (マタイ16・1~3)

 当時の人々は「時のしるし」の預言を知りながら、実際に、それを見分けることができずに滅んでしまったと言われています。ここでいう預言とは、未来を予想する「予言」ではなく、「預」かるという漢字、頁という漢字の左に「予定」の「予」を書いた「預」という漢字の「預言」、つまり人が神の言葉を「預」って、人々に神の計画や警告を語ることを意味しています。

 ここで言われている、かつて見分けることのできなかった、「時のしるし」は、情報社会の最先端に生きる現代人ならばだれしも、賢明に感じ取ることができるのではないでしょうか。聖書には、現代文明の終わりを意味する、いわゆる「終末」と呼ばれる時代の預言も存在します。聖書は、次のように述べています。

 「この天地は滅びます。しかし、私の言葉は、決して滅びることはありません。」(ルカ21・33)

 「あなた方の心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、その日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないようによく気をつけていなさい。その日は、全地の表に住む全ての人に臨むからです。しかし、あなたがたは、やがて起ころうとしているこれらのすべてのことから逃れ、人の子の前に立つことができるように、いつも油断せずに祈っていなさい」(参 ルカ21・34~36)

時のしるし

片柳 弘史 神父

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 神さまは、出来事を通してわたしたちに語りかける。何かが起こったとき、出来事の表面だけを見て自分の都合のいいように解釈するか、それとも出来事の前に立ち止まり、出来事に込められた神さまからのメッセージを読み解こうとするかによって、わたしたちの人生は大きく違ってくるだろう。

 たとえば、思いがけない成功を収めたり、願ってもない出会いに恵まれたりして、人生が大きく展開してゆくとき、わたしたちはつい、「これは自分の実力だ。自分はなんてすごい人間なんだろう」などと都合のよい解釈をしてしまう。しかし、それでは傲慢に陥り、やがて大きな失敗を犯すことになりかねない。色々なことがうまくゆく時こそ、出来事の前に立ち止まり、神さまからのメッセージに耳を傾けるべきだ。成功を恵みとして神に感謝し、なぜ神さまはこのような成功を与えてくださったのか、自分が果たすべき使命は何なのかと思い巡らして進むなら、躓くことはないだろう。

 逆に、思いがけない失敗をしたり、病気や事故に見舞われたりした時、わたしたちはつい「私は何と不幸な人間なんだろう。もう終わりだ」などと考えてしまう。だが、そんな時にも、出来事の前に立ち止まり、謙虚な心で神さまからのメッセージに耳を傾けるべきだろう。神さまは、その失敗を通してわたしたちを正しい道に引き戻そうとしているのかもしれないし、人生を見直すチャンスを与えてくれたのかもしれない。諦めるには早すぎるのだ。

 神さまは、出来事を通してわたしたちに語りかける。出来事の前に立ち止まり、神さまからのメッセージに耳を傾けることを日々の習慣とするならば、人生の道のりは、いまよりずっと確かなものになるに違いない。


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