食事と健康

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 「あれ?、ここの食事まったく塩気が無い。」私が那須に赴任したときに最初に感じたショックです。その食事になぜそんなにショックを起こしたかというと・・・。

 そこはカトリックの神父養成のための合宿所でした。そしてその合宿所は、自然を活かした障害者施設の敷地の一角を借りていたので、食事はその施設から分けていただいていました。だから、しっかり、栄養士の方が健康を考慮して管理された食事だったのです。

 健康を考慮した食事を塩気が無いと感じるとはどういうことか?それはそれまでの食生活がいかに塩気たっぷりの食事だったかを示しています。確かにそれまでの暮らしは、例えば信者さんが、これ食べませんかと、即席ラーメンを箱でもって来てくださり、その即席ラーメンを肴に毎晩ビールで一日の終わりを迎えるという食生活で、まさに塩気たっぷりの1日4食でした。

 その後、気づいたことが次から次へと出てきました。まず、食事を食べて少しすると、おやつを食べたくなったこと。でも、そこでは、お菓子を買いに行くのに歩いて30分以上かかるため、我慢せざるを得ませんでした。次にのどが渇いても近くにジュースの自動販売機がありません。仕方なくお茶を飲まざるを得なかったこと。そして、昼ご飯と晩ご飯の前にはとってもお腹がすいてしまったこと。デスクワークが中心の前の仕事から、学生と一緒に作業をして体を動かす生活に変わったからでした。

 こうして、半年も経たないうちに、それまで疲れ気味だった体がしゃんとしてきました。いかに健康のために食事や運動が大切かを感じた転勤でした。

 今は高血圧で糖尿の気がある、私の懐かしい思い出です。

時のしるし

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

 「ボンビー・ガール」という言葉、一時流行っていたのが、この頃また復活しているとか。

 なんのことかと思ったら、貧乏ガールをひっくり返した言い方なんですね。1ヶ月の食費は5千円、生活費2万5千円であげるのだそうです。M子さんが激白してくれました。

 ガールといっても40代も終り、就職活動をしても正規の就職はかなわず、アルバイトで「食いつないでる」そうです。世界中おしなべて貧富の格差社会、「どん底までいったら、こわいものがなくなりました」と彼女はほがらかです。

 「いよいよとなったら、路上生活しようかしら。今までは、路上生活の人達に、炊き出しのとん汁なんか作って配っていたんだけど」とあっけらかんとしています。

 神は与え、また取り給う。とのヨブの物語を地でいって、ほんのちょっとした身内の失敗で、連帯保証人になっていた彼女は、無一文になってしまいました。強気の彼女は、「これも時のしるしよ」とうそぶいているので、こんな時に使うものかなあ、とハテナ顔の私です。

 貧しくされて初めて、貧しく小さくされた人達のことを思いやることがどういうことかわかった、と彼女は言います。

 可哀相に、と上から目線で品物をあげたり、目には見えない線引きをしたりしていたことが、どんなにあの方達を傷つけていたか、つらい思いをさせていたか、と。

 人生の勝ち組とか、負け組といった線引き。

 イエスさまはどんなに貧しく弱く、しいたげられている人達をいつくしまれ、愛されたか。決して上から目線なんかじゃなかった。弱く貧しければ貧しいほど、お愛しになった。

 「わたしもあの人達の仲間よ。今は。だから一緒に生き抜いていきます」と、今までになく、キッとした表情で彼女は言ったのです。


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