時のしるし

新井 紀子

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 昨年の9月、北海道に大きな地震がありました。 震度7の震源地では、広い範囲にわたって山が崩れ、多くの死者が出ました。我が家がある道南地方大沼は、震度四強と報道されましたが、幸い大きな被害はありませんでした。しかし、北海道全域がブラックアウトといわれる停電になってしまったのには大変困りました。

 私たちが暮らす大沼地区は、人口2700人、牛1万5千頭の酪農地帯です。中でも乳牛を飼っている農家では、朝夕の乳しぼりが欠かせません。乳が絞れないと牛たちは乳房炎という病気になってしまいます。この病気になった牛乳は、出荷できないだけでなく、牛が死んでしまう怖い病気なのです。

 牛の搾乳は電気搾乳機で行います。搾乳した牛乳は冷蔵庫で保管し、出荷されます。すべての作業に電気は欠かせません。その電気が来ないのです。大騒ぎになりました。そんな時です。大沼地区の運送会社H運輸から申し出がありました。

 「良かったら、うちの会社の自家発電機を使ってください」 牛農家はありがたく使わせてもらうことにしました。農家が順番に搾乳し、一頭も乳房炎になることがありませんでした。しかし、悲しいことに苦労して絞った牛乳は、飲まれることなく廃棄されたのです。農家と乳業会社の冷蔵庫、すべてが止まってしまい、農家一軒あたり何10万円もの損害だったそうです。

 北海道胆振東部地震と名付けられた大地震は、震源地だけでなく、直接被害がなかった大沼でも大きな損害を与えたのでした。

 大地震とそれにより引き起こされた大停電という「時のしるしは、私達人間に一体何を伝えようとしたのでしょう。

 どんな時も一人ではありません。災難のときこそ助け合いなさい。

時のしるし

越前 喜六 神父

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 わたしたちの生活にとって、天気予報というのは、欠かせない要素になっています。わたしは昔、中学生に「地理」を教えたことがあるので、今でも天気に関心がありますが、アメダスという気象衛星から送信されてくる地球の気象状況の写真を見ても、よく分からないことがあります。それは専門家でないからかもしれませんが、専門家でもその気象のデータをよく観察して、晴か、曇りか、雨か、あるいは台風なのかなどを予測しているだけだと思います。なぜなら、それは「しるし」に過ぎないからです。昔から、天気予報でさえ、「当るも八卦、当らぬも八卦」といって占いみたいに考えられていたではありませんか。

 若い頃、わたしは夏休みによく富士五湖の一つ、河口湖畔の別荘に2週間滞在していたことがあります。暇ですることがないので、よく目の前に聳える富士山を眺めていました。それで富士に魅せられて3回も登山しましたが、ある時、富士河口湖町のお店のお女将さんから面白いお話を聞きました。それは富士山の頂上に、どんな雲の形が懸かるかによって、晴か曇りか雨か分かるというのです。それで、わたしも午前中、ずっと富士山を眺めていました。そして、富士山の頂上にどんな雲の形が現れるかを観察しました。すると、その女性が言ったとおりでした。

 昨年は、日本列島も異常なほどの天変地異に見舞われました。それを見ていて、地球の現象を考えるとき、それは単なる自然現象なのではなく、人類という集団意識が惹き起こしている現象でもあるのではないかと思うのです。人類が非常に利己的になって、自然を破壊した結果、起こっている現象ではないかと反省する次第です。


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