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たえず1歩前に

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

 「今日のことは今日のうちに、余力があれば明日のことも先取りする」というのは、五島の母が子どもたちに口すっぱく言っていたことである。

 「イエズスさまはさ、今日の苦労は今日1日で足れり、明日のことは思いわずらうなっち、言うておられるばってん、やっぱりさ、わたしは、今日のことをした後、少しでもさ、明日のことばしておきたかとよ。明日、何が起こるかわからんけんね。明日、また、誰かが相談にのってくれろと駆け込んで来たらさ、時間がとられるけんね。他人の話ば十分聞いてあげたり、その人のために何かしてあげんばいけんごとなったらさ、時間がいっぱいいるけんね」というのが母の言い分であった。

 実際、母は和裁をして家計を助け、毎日、泊まり客もあるので、1日24時間をいかに有効に使うか、心をくだいて暮らしていた。

 それで夜なべをして、明日の分を先取りするのを日課としていた。

 しかし、晩年の母は、「イエズスさまはやっぱりさ、良かことば言うてくれとる。こげんして、今じゃ他人の世話はできん、逆に他人に世話してもろうてる身になってからさ、今日1日の苦労は今日1日で足れり、明日のことは思いわずらうなっちいうことばが深く身にしみるとよ。こげんなわたしばやさしくかぼうてくれちょるごとあって・・・」と言って涙ぐんでいた。

 聖書の言葉は、その人の年齢や環境によって感じることは異なることもあるだろう。

 私も夜、洗濯できない体調の悪い日は「今日の苦労は今日1日でいい、明日のことは明日考えよう」と神さまに祈りつつ眠ることにしている。