友好

土屋 至

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キリシタン武将高山右近の伝記を読んでいたら、当時堺や高槻で行われた日曜日のミサには、戦場で敵となって争っていたキリシタンの武士たちが同じミサに平和的に参加していたということが書かれていました。

これを読んで思い出したことがあります。学園紛争が下火になった50年ほど前のことです。

私には同じ中学高校で学び、ほぼ同じころ一緒に洗礼を受けた親友がいました。彼は何事にも真剣にとりくみ、口数は少ないけれど、一本筋の通った男でした。大学には彼は1年遅れて入学。私と同じ教育学部に一年遅れで進学してきました。しかし、久しぶりに会った親友は対立するセクトのリーダーでした。学生大会ではお互いに激しくののしり合い、相手の方針を非難攻撃しあいました。

 

それは悲しいことでした。中学高校以来はぐくんできた友情がこんなことで亀裂が生じ壊されていくものかと。

 

そこで私はこのことをあるスペイン人の神父さんに相談しました。子どものときにスペイン市民戦争を経験したその神父さんは「和解のミサ」を3人でしようと提案したのです。親友にそのことを持ちかけたら、彼もそれを待っていたかのごとく賛成してくれました。そして、そのスペイン人の神父さんがつかさどる、親友とわたしの3人だけの「和解のミサ」が畳の部屋でささげられました。その神父さんは、ミサの終わりでどんなに政治的に対立していたとしても変わらない友情を祝福してくれました。

 

それから私たちは中学高校以来の親友関係を回復しました。そして、私もかれも大学を卒業して別々の高校の教員になりました。今はもう2人ともリタイアしています。

 

しばらく会っていない彼に久しぶりにたまらなく会いたくなりました。

 

友好

新井 紀子

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夫の新井満が翻訳し曲を付けた「千の風になって」という歌が世の中に知られるようになって、10年の歳月が流れました。この歌を様々な方々がカバーして歌ってくれました。

私たちが嬉しかったのは、アイヌ民族の人々から、アイヌ語に翻訳して歌いたいと言われた時でした。それがご縁で、アイヌの方々と友人になり、親しくなりました。白糠という町に夫婦で招かれ、ごちそうになったり、アイヌの踊りを見せてもらったりしました。

日本ペンクラブ主催の平和の日・函館の集いには、アイヌ民族の人々に来てもらい、踊りや歌を披露してもらいました。夫と対談もしました。アイヌ文化の伝承者である秋辺日出男さんと夫は、一緒にアイヌの歌を作ろうということになりました。

アイヌ語に「イランカラプテ」という言葉があります。「初めまして今日は」という意味です。しかしその背後には、もしできることならば、あなたの心にそっと触れさせてください、という意味をも含んでいるのだそうです。それを知った夫は感動して言いました。

「素晴らしい。世界で一番奥ゆかしい挨拶言葉だね」

秋辺さんと夫は3年の歳月をかけて、歌を作りました。

〈イランカラプテ ー君に逢えてよかったー 〉

作詞は秋辺さんと新井満の合作です。作曲、歌唱は新井満が担当しました。この歌は見知らぬ人同士が出会った瞬間を歌っています。

現代人の出会いは、乱暴になりがちです。相手の気持ちも考えずにずかずかと土足で入っていくような所があります。そういう出会いとは正反対の控えめな出会いが「イランカラプテ」の中にあります。

友好的な出会いをするために、まずは相手を思いやること。奥ゆかしい「イランカラプテ」の心を忘れないようにしたいと思います。


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