「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。
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(月~土)毎日お話が変わります。
坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。
今、この世界を見渡すと、目に見えにくいような壁があることを感じる。国と国との国境の壁、人種の壁、宗教の壁。
ある大統領が国境に巨大な壁を作ると宣言した時、私が親しみを込めてパパさまと呼んでいる教皇さまは「壁より橋をかけるように」とおっしゃられた。パパさまの教えを各国のリーダーが実践したなら、戦争など起こらないのではないかと思う。
毎日、テレビをつけるとロシアとウクライナの戦争、イスラエルとハマスの戦争・・・・と悲惨な状況が次々と映し出されるので、最近ではほとんどテレビをつけなくなった。
なぜ、同じ人間なのに、こうも紛争が起こり続けるのか?
私の父は第2次世界大戦の頃には何度か招集されて戦地へ赴いた。
父は衛生兵であったので、何とか生きのびて帰ったが、戦後、10年経っても夜中にうなされてよく飛び起きていた。
「ああ、よかった。家におる」と安堵の表情に返る姿をたびたび目撃した。
「戦争は我の張り合い、欲の突っ張り合い」というのが父の口癖であった。
父は中国にも行っていたが、現地の人と仲良く写った写真を持っていた。敵国の日本人兵士たちに中国の現地の人たちは夜中に食べ物をそっと置いてくれていたという。
国が違い、言葉が違っても人間の心というものは深くつながっているものだと父は私たち子どもによく教えてくれた。
私の子どもの頃、教えを受けた松下佐吉神父さまは「心は地球を包めるくらい大きい」とおっしゃった。
それなら、ちまちまと壁を作らず、心を大きくして、その壁をも包み込みたいものである。