2025年09月のコリーンのコーナー

(福島県)(学)福島聖心学園
小名浜白百合幼稚園
教会跡地に立つ聖母子像

エルサレム黄金時代の王 ②

 ソロモンが労力を注いだ他のものには、文芸の領域が含まれていました。ソロモンがもっとも知られているのは、おそらくその知恵のゆえでありましょう。列王記上ではソロモンの夢の物語が載っています。夢でソロモンは神に世を賢く治める能力を与えたもうと願いました。神は答えられます。「今あなたに知恵に満ちた賢明な心を与える。あなたの先にも後にもあなたに並ぶ者はいない」と(列王記上 3:12b)。ソロモンの知恵文学の伝統を支えているのは、「箴言」、「ソロモンの歌」とも呼ばれる「雅歌」、「ソロモンの知恵」など聖書のいくつかの書で、いずれもかれに帰されています。実際にソロモンが書いたということではなさそうです。

 そうしてみると、ソロモンには実際に聖書的な枠組みを支える具体的な業績があったようです。とはいうものの、この話のうちにも「輝くものすべてが金ではない」という、あのシェークスピアの有名な言葉の真理を認めてしかるべきでしょう。そうでなければ、あまりに単純な見方を露呈してしまうからです。

 聖書神学者のウォルター・ブルッゲマン(1933-2025)は、ソロモンの黄金時代が現代の私たちに多くのことを教えてくれると論じています。聖書はそのヒーローたち、モーセ、ダビデ、ソロモンなどが完璧な人間ではないことを認めていますが、聖書が物語を通してあぶり出す教訓は個々人の弱さや欠点を超えたものなのです。

 聖書はソロモン王が建設事業のために「課した労役についての事情」(列王記上9:15)をも、隠すことなく語っています。そればかりか、ソロモンが「契約と掟を守らなかった」ことに対して、神はその息子から王国をとりあげることで、罰しているのです(列王記上11:11-12)。ところが、ブルッゲマンはソロモンの物語が、ある危険性を描いているとさらに巧みに主張しています。ひとたび指導者や社会が、その信仰の根源からはなれてしまうと、力と権力を「崇拝」してしまうことになるというのです。そこでは、大いなるものが力なき者たちの背にずっしりとのしかかるのです。そこでは、平和が協働して築かれる代わりに、上から押しつけられます。そこでは、真理が本来的に意味するものとは異なるものを指し示すのです。

 ソロモンの物語は三千年も昔のものですが、不幸にも、預言者らにではなく、王たちに聴き従うことで支払うことになるそのツケが、今日まったく同じように回ってきているのです。