2025年07月のコリーンのコーナー

(学)カリタス聖母学園 大村聖母幼稚園
園舎と中庭の滑り台

カラー・パープル①

 1983年、米国の作家アリス・ウォーカーは小説『カラー・パープル』(1982年)でピュリツアー賞を受賞します。
 はじめて読んだのは、私がまだ大学生のころでした。その本にはいくつもの色で下線がひかれ、背表紙は崩れ、コーヒーの跡がところどころに残っています。物語は読みやすくもなく、また心地よいものでもありませんでした。だからこそ、あれから何十年たってもいまだに思い出すことがあるのでしょう。

 物語は比較的短いもので、240頁くらいです。さらにこれは書簡小説で、手紙の形式で語られる物語であるために、ブランクのスペースがかなりを占めているのです。それでも、この小説を読み終えるのは、かなりの難題でした。アフリカ系アメリカ人の話し言葉、よく黒人英語と呼ばれる地域言語で書かれているのです。さらにテーマも重いものでした。これを読むには、知的にも感情的にもかなりのエネルギーが要求されたのです。

 『カラー・パープル』は20世紀前半、米国のジョージア州に生きるセリーという女の子の数十年に及ぶ物語です。
 セリーは継父から虐待をうけ、夫からも同じ目にあいます。また、愛する妹ネティーとは生き別れになっています。
 セリーははじめ、神さまに向けて手紙を書きます。継父がセリーに自分の身におこったことは「誰にも話すんじゃないぞ、神さまのほかにはな」と命じたからです。
 それからしばらくして、今度は妹ネティーに宛てて(どこにいるのかもわからぬままに)書きはじめます。神さまが耳を傾けてくれていないように感じたからです。

 セリーの神様に向けた50通に及ぶ手紙は、「神さま」(ディア・ゴッド)で始まります。どんなメッセージも明らかに神さまの耳に向けられるでもなく、人生の出来事を綴っているだけです。讃美や祈願の言葉もありません。神がどんな方であるかに思いを致すこともしません。
 また、ネティーに宛てた二番目の手紙で、セリーは友だちのシャグと神さまについて交わした会話について語っています。
 シャグはセリーに、「どうして神さまに手紙を書くのをやめたのか」と問います。セリーは答えます。「神さまなんか、いったい私に何をしたの?」と。「もし あの人 [神さま] がかわいそうな黒人の女に耳を傾けていたら、この世はぜんぜん違う場所になっていたでしょうから」と。
 この場面にきてようやく私たちは、神と「カラー・パープル」について知るようになるのです。