聖書から強く感銘を受けるイエスの宣教姿勢は、すべて真剣に対応する熱意です。当然のことながら、時間に流されて働くようなルーティンワークなど見当たりません。
現代社会において挙げられる熱意ある姿勢の持ち主といえば、思い浮かぶのはイエローハットの創業者鍵山秀三郎氏でしょう。彼の真摯で熱意ある行動は、イエスの宣教姿勢の要の一つと観るからです。
企業の責任者、社長でありながら自ら率先してトイレ掃除に真剣に取り組む姿勢。本来彼の仕事は、自社の管理運営だけで十分であるはずです。ところが、それとは別に素手で便器に向かって毎日掃除する。しかも自社のトイレ掃除だけにとどまらず、公衆トイレの掃除までされるのです。これは生半可な気持ちでは出来ません。他人から、社員から変人扱いされても止めることはなかったのです。彼の真剣さ、熱意がなければトイレ掃除は継続不可能であることを教えられます。
鍵山氏曰く「真剣に熱意を込めて掃除するとき初めて、磨けば磨くほどきれいになっていく、その喜びの味を知るのです」と。
某夫人曰く「主婦は毎日便所掃除をやります」と。
確かに、主婦は毎日大変な仕事をしています。しかし、鍵山氏の場合は、自社だけに留まらず公衆トイレにまで出向かれるのです。しかも公衆で汚れたトイレ掃除を "素手" でされるのです。さらに感銘を受けるのは、鍵山氏の講話です。聴く人に何ら気負いを感じさせない、否、むしろ "当たり前のことを、当たり前のようにしているのだよ" と、淡々と話されるその姿勢です。ところが一旦、便器に向かうその時の鍵山氏の顔は、真剣そのものです。その鍵山氏の真剣な姿を観て、多くの人々は、" こんな方が今の日本にいらっしゃったのだ " と魅了されるのです。たった一人で始まった小さな行いが、次第に地域社会に、さらに日本社会に影響を与えているのです。
さて、神戸の六甲には、カトリックの中学・高等学校があります。その学校では、すでに鍵山氏の活動前から、生徒たちが素手でトイレの掃除をし、現在も続いています。
その結果、卒業生の中には、聖職の道(司祭・修道者、教育者、医者)を選ぶ人も多く、また、地域のニーズに応えた奉仕の道でご活躍されていると伺います。
現在、カトリック教会は少子高齢化、司祭・修道者の減少から信徒による使徒職への参画を期待しています。
明日の教会を担われる信徒の方々へ。イエスの福音宣教、それはあなたのすぐ傍にある小さな奉仕です。その奉仕を真剣に取り組み継続することによって、漸次、人々に喜ばれ、あなたの心も喜びに満たされるのでしょう。
そして、その喜びが次第に共同体に、地域社会に反映されていくのです。
これこそ現代社会における福音宣教の姿ではないでしょうか。
心のともしび運動 松村信也
2021年5月に始まりました「善き牧者の学校」の記事は一旦ここでお休みさせていただきます。
長い間をお読みくださいましてありがとうございました。
どうぞこれまでの記事もお読みいただければ幸いです。
第一回はこちらです。
感謝を込めて。 イエズス会員 松村信也