2022年04月の善き牧者の学校

(長崎)純心中学 純心女子高等学校
校舎と御聖堂

カトリックのあれこれ

カトリック教会の教えについて

 今回「カトリック教会の教え」(新要理書:カトリック中央協議会出版)から "第一部キリスト者の信仰(岩島忠彦師執筆)"を要約させて頂き、お伝えしようと考えました。
 しかし、事前に許可申請のため本書の要約を掲載しても良いかどうか確認したところ、本書に関して"要約"は、出来ないことを知りました。したがって、「カトリックの教え」(新要理書)を詳しく知りたい方は、ご購入されるか図書館にてお借りして読まれる事をお薦めします。
 また、これを機会に「カトリック教会の教え」のご理解をさらに深めて頂かれる事を願います。

 本書は、第二バチカン公会議前にありました"カトリックの公教要理"と同じものではありません。
 1994年「カトリック教会のカテキズム」が出版され、2002年同書日本語訳出版。これを基本として日本の司教団は、各分野の専門家によって日本の実情に即したカトリック教会のカテキズムの日本版「カトリック教会の教え」が2010年に出版されました。どのような内容であるか、すでにお読みになられた方もいらっしゃると思いますが、「善き牧者の学校」閲覧者の方々へ本書の第一章の一部分だけご紹介させて頂きます。

 紀元前384年頃、バルカン半島の小さな町で生まれた有名な哲学者アリストテレス(BC384-BC322)は、17歳頃、現在・ギリシアのアテネでプラトンのアカデミアに入り約20年間生徒として学びました。彼の残した言葉に「自分を知ることは、すべての知恵の始まりである」とあります。「カトリック教会の教え」(新要理書)は、アリストテレスの言う「知恵」を探求することでもあります。そこで新要理書は、先ず、"自分を知る"ことから始めています。

(1)人間とは

  1. 人間の謎:私たち人間は、他の動植物とは異なり特別な存在です。他の動物と違って理性が備わっているからです。その人間とは誰なのか、そして何の為に生きているのか。私たち人間はまた一人ひとり独自性があり、その独自性を保ちながら生涯を過ごします。
  2. 精神的働き:人間が他の動物と違う点は、体と五感の他に考える能力・理性を持っています。そして、すべての認識は、五感を出発点として経験から始まります。その経験したものを反省し理解しますが、さらに確信に至るまで問い続けます。その過程において、意志を働かせ決断して行動に移すのです。この過程、理性だけでなく意志の働きこそ人間の特徴であると言います。人間は、真理と善の認識から自由に行動し、その行動に責任を持つ存在なのです。この習慣を持って行動するのが「徳」と呼ばれ、真逆の正しくない習慣の行動を「悪徳」と呼びます。
  3. 心と体:人間は精神的な働きだけでなく、人の心が体を通して働くのです。心と体が一つとなって、真の人間らしい命があると言われます。

(2)人生の目的

  1. 人生って何か:人間は単に存在しているだけではありません。この世に生を受けた人間一人ひとり人生の旅をします。その旅には、幼年期から始まり老年期で終わりますが、これも人それぞれあります。人はそれぞれ異なる環境で生まれ、育ちます。それ故に人は皆、異なる人生を歩みます。その歩みの中で成功、失敗、幸せ、不幸など悲喜交々です。そうした中で人には、想定しなかった運命的なものに導かれています。人生において、計画可能なもの、不可能なもの、それは誕生と死と言われます。人は誰も死を望みませんが、必ず、その時がやってきます。
  2. 生きる目的:この世のものすべてなんらかの意義や目的を持って存在しています。この世に生を受けた人間の意義と目的は一体何なのでしょうか。それは与えられた人生の旅の中で、人それぞれ計画し目的を持って生きています。勿論、すべて計画通りに行く事もあれば、行かない事もあるでしょう。そして、そこから幸せ、不幸、成功、失敗、喜怒哀楽を体験させられるでしょう。しかし、それらの計画目的は、真の究極目的であると言えないかも知れません。
  3. 神との一致:私たちの人生に対する見方・視点は、この世のものに焦点が当てられ、それに向かって行動し、反応していることが多いと思います。人間のこの世での存在、生きるとは何かの視点から観る時、何か他に目的があるのではないでしょうか。色即是空なものに切磋琢磨し、それによって喜怒哀楽で終始する人生ではない特別な何かもっと深いところにあるもの。それが「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つひとつの言葉で生きる」とイエスの言葉に隠されているように思います。人間は、それぞれ与えられた人生の中で「その時」を大切にしながら、漸次それぞれの究極目的に向かって歩み始めるとき、限りある世を超えた永遠のいのちに至る道を生きるのではないでしょうか。

心のともしび運動  松村信也