2022年07月のキリスト教の歴史
サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂(スペイン)

明日の教会に向けて

①日本の教会をとりまく環境

 "心のともしび運動"のホームページは、2021年5月にリニューアルしました。そして同年10月から新たなジャンル「知っとこコーナー」を開設。
 このコーナーでは、"キリスト教の成り立ち"を皮切りに9ヶ月間に渡ってキリスト教の歴史、特に"日本におけるキリスト教の歴史"をお伝えしました。   https://tomoshibi.or.jp/christian_history/ayumi/

 ご覧になって頂いた方には、ある程度ご理解して戴けたと思いますが、日本のキリシタン史の壮絶さは、他国に類を見ない過酷な迫害、殉教史です。その歴史を担って473年もの長きに渡って代々引き継がれて来たキリスト教が、現代の少子高齢化、司祭、修道者の減少を要因に日本から消滅すると誰が想像するでしょう。喩え某企業の創業者から「・・・日本はいずれ存在しなくなるだろう」と言われようとも、キリスト教は、存続するのではないでしょうか。

 しかし、現代社会が、これまでの社会と全く異なると言われる中で、日本のキリスト教は、何を目標としているのか。その為には、現在日本で何が必要か。教会自身が今日まで積み重ねて来た数々の実績、失敗などをも含めて「明日の日本の教会の姿」を見据えながら、個人的な意見になるかもしれませんが、「知っとこコーナー」の総集編にします。

 総集編その(1)として、第二バチカン公会議において画期的と言われ、現在もその研鑽と同時に諸外国において、それぞれの国情に併せて実践している「信徒使徒職に関する教令」をメインに、先ず教令の再確認、そして日本での具体的方策を「明日の教会」のための礎にとの思いを寄せて記載します。  その前に、日本の教会を取巻く様々な問題点を診ていきたいと思います。

  1. 日本の教会使徒職の立場から社会の現実を観ると
    1. 1993年、日本は世界第二位の経済大国だった。ところが三十年経った現在、日本は人口の減少だけでなく、資源、工業、情報、教育など様々な分野で世界に後れをとっている。
    2. 男女の差別、賃金格差、女性管理職は極小で世界の男女格差指標では、世界200カ国中、日本は166番目という後進国である。人手不足、人材不足と言いつつ、有能な女性を採用しない。
    3. IT関連分野で日本は、東南アジアの中で"デジタル後進国"と呼ばれる。この我が国特有の原因は、年長者が大きな力を持つこと、つまり、いつまでも年長者が社会で権力を握っている。(日本の国会を観ると自明)
    4. 他国に類を見ないキリシタン迫害・殉教の長い歴史を持つ。キリスト教伝来から既に473年の歴史を持つが、未だに宣教国である。
    5. 現在、全国のカトリック信徒数は、43万人(中央協議会資料)。日本の人口比率0.3%に過ぎず、超マイナー宗派の一つである。
    6. 悲観的見解ではなく、殆どの日本人はどの宗教に対しても宗教アレルギーのようなものを持つ。その大きな原因は、カルト宗教、新興宗教から悪い影響を受けていること。カトリックといえども、日本人は、カルト宗教、新興宗教と同列に観る。その結果、高位高名司祭の発言であれ、殆ど社会に影響を及ぼすこともマスコミに取り上げられることもない。

  2. カトリック信仰を支えている要因;信仰の支え
    1. キリスト教が世界3大宗教であることと、その先人たちの信仰
    2. 戦前戦後物資の不自由な時代、宣教師たちの熱心な福音宣教活動が日本人を魅了。特に敗戦後、進駐軍経由で宣教師たちから物資を享受し、飢え乾く人々への救いの手、力となった。その恩義が古い信者の心に残る。
    3. 人種、民族を超えた信仰。世界中に親しい友の連帯の輪に魅了される。

  3. 信仰の"つまずき"
    1. 司祭、修道者と一般人の生活感の相違。言行不一致な姿勢。
    2. カレンダーの国祭日が仏教、神道暦のため信者としての意識が希薄。
    3. キリスト教信者ではあるが、最後は(諸事情有)他宗教で終わる人もいる。

  4. 信仰の奉仕活動
    1. みことばの実践→貧しい人々への寄附、支援活動
    2. 司祭の高齢化、減少による奉仕(お手伝い)
    3. 置かれた場所での愛の実践→地域の隣人(未洗者)への奉仕

  5. 奉仕する信徒に敵対するもの
    1. 頑なな高齢信者の否定的態度から嫌悪感→信仰教育の欠如
    2. 若者の教会離れ→教会、司祭、修道者の魅力不足&社会人信徒は価値観の相違に苦悩
    3. 若年層の教会離れ→塾通い、日本の教育制度の問題

  6. *信仰の証*
    1. 宣教活動は地味で継続的な道であること。"言葉が先にあるのではなく、人と人との関係が先にあり、そこに互いの信頼関係が生まれる"。絆を大切にする(初代宣教師たちは実証した)。
    2. 若年層、青年層への宣教は、学校教育を充実させること。一貫教育の推進はハードであるが、そこに宝がある。ミッションスクールは全国で活躍したし、今もその実績を残している。→Resurrection・再復活
    3. 学校教育の中での社会の弱者との関わりは、インパクトある福音宣教。

  こうした現実の問題点(一部分かも)を素直に受け止めたうえで
  ご一緒に「明日の日本の教会の姿」を考えながら、読んで戴けることを期待します。

心のともしび運動 松村信也