そのとき、十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた。イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」
マタイ福音書の最終章、弟子たちを世界中へ派遣する場面です。
主のご昇天の出来事は、第1朗読の「使徒言行録1章」に記されています。ルカはイエスの誕生からご復活、ご昇天までを「ルカ福音書」に、ご昇天の場面以降を「使徒言行録」に記しました。
本日の福音書では、復活されたイエスが、弟子たちに四つの使命を与えます。「行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授けなさい。私が命じたことをすべて守るよう教えなさい」という四つの使命です。弟子たちは「世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」というイエスの約束に支えられながら、聖霊の力を授かって、これらの使命を果たすために派遣されていくのです。
*キーワード1:ガリラヤ
復活されたイエスが、墓を訪れた婦人たちに出現されて、「ガリラヤに行くように。そこで私に会うことになる」と弟子たちに告げるよう命じられました(マタイ28章10節)。
かつてイスラエルの民は、出エジプト後に、シナイ山で律法を授かりました。そして弟子たちは、復活されたイエスから、ガリラヤの山で新しい律法を授かることになったのです。
ガリラヤはペトロたち4人の漁師が最初のイエスの弟子として召命された場所です。3年にわたって弟子たちがイエスと共に暮らした生活の場所でした。復活されたイエスは、弟子たちと会う場所としてガリラヤを選ばれました。
*キーワード2:主の昇天
カナダから来日され、生涯をかけて宣教活動に当たってくださった修道士の方が、老後帰国され、帰天されたときのことでした。日本で行われたお別れの会で弔辞を読まれた方の感謝の言葉と共に、「この世でのお別れは寂しいですが、カナダと日本という距離が消えて、時間や場所に限定されることなく、いつでもお話しできるようになりましたね」と、ご遺影に語りかける姿が印象的でした。
復活されたイエスは、ペトロやパウロをはじめ数百人に出現されて、メッセージを与えてくださいましたが、地上におられた間は、時間や場所に制約がありました。しかしご昇天されたことによって、時間や場所を超越して「世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」ことが実現したのです。
*キーワード3:世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる
マタイ福音書最終章の最後のキリストの言葉です。マタイ福音書1章で、ヨセフが夢の中でキリストの誕生を知らされたとき「その名はインマヌエルと呼ばれる。その名は『神は我々と共におられる』という意味である」(23節)と天使から告げられた言葉でもあります。
アフガニスタンでの支援活動に生涯をかけられた中村哲医師は、生前、この聖句「天、共に在り」(中村さんの著書名にもなっています)が聖書の真髄であると述べておられます。
主の昇天の主日にあたって祈ります。どのようなときにもいつも共にいて励ましてくださるキリストに信頼して、生活の場で、神の愛を証して生きていくことができますように。 アーメン。
参考:(第一朗読:使徒言行録1・1-11)・(第二朗読:エフェソ1・17-23)