イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。5彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。
『ユダの地、ベツレヘムよ、
お前はユダの指導者たちの中で
決していちばん小さいものではない。
お前から指導者が現れ、
わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」
そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムヘ送り出した。彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。学者たちはその星を見て喜びにあふれた。家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。
本日の登場人物「占星術の学者たち」とはどのような人たちだったのでしょうか? 科学の進んだ現代でも「星座占い」は愛好されていますよね。3世紀中国の諸葛亮孔明、平安時代の陰陽師として名高い安倍清明など、占星術は広く重大な決断の場で使われてきました。
しかしユダヤ人は違っていたのです。「あなたたちは血を含んだ肉を食べてはならない。占いや呪術を行ってはならない」(レビ記19章26節)とあるように、律法で占いは禁止されていたのです。その星占いの学者たちが、こともあろうにユダヤ人が待ち望んでいたメシア誕生をヘロデ王に知らせにきたのです。
ヘロデ王が学者たちに聖書の記述を調べさせ、メシア誕生の場所を探り出して、ローマ帝国の支配から解放してくれる期待のかかるメシアを殺そうと企んだのはなぜなのでしょうか? 理解するポイントは「ヘロデ王はローマ帝国に取り入ることによって王にしてもらった人物であり、ユダヤ人の支持を受けて王になったのではない」ことにあるようです。メシア誕生の知らせに不安に感じたのは、ヘロデ王の周辺にいたエルサレムの人々も同様であったと聖書は伝えています。彼らに共通するもの、それは今の生活を変えたくないという考え方にあるのではないでしょうか。
ご公現の主日に祈ります。
私たちが、神様からの最高の贈り物を、よき知らせとして喜んで受け入れることのできる心を持つことができますように。そして、今も孤独な人、苦しむ人と共におられるキリストを見失うことなく、生きていくことができますように。 アーメン。
◆参考「時代背景について」
ユダヤ人たちは、待ち望んでいた救い主を「ダビデの子」と呼んでいました。「メシア」はヘブライ語で「油注がれた者」という意味で、神に選ばれた偉大な王を指す言葉です。ローマ帝国に支配されていたユダヤ人たちは、偉大なダビデ王やソロモン王のようなメシアが現れて、ローマ軍を武力で打ち破り、解放してくれる日を待ち望んでいたのです。
*「メシア」のギリシア語訳が「クリストス」(日本語表記で「キリスト」)です。
*「イエス・キリスト」と呼ぶことは、ナザレのイエスがメシアである(イエス=キリスト)という信仰告白を意味しています。
参考:(第一朗読:イザヤ60・1-6)・(第二朗読:エフェソ3・2、3b、5-6)