光る君へ

毎月のお便りイメージ

 「師走」と呼ばれる12月になり、カトリック教会では「待降節」に入りました。
 何かと気忙しい時期ですが、よく祈り、心を整えて御降誕のイエス様をお迎えしたいと思います。

 さて、今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」を観て感じたこと、考えたことを綴ってみたいと思います。

 まず、中国から伝来した漢字をもとに、今から約一千年前に日本の言葉をそのまま表現できる「ひらがな」が発明されたことは、日本文化の発展にとって革命的な出来事であったことが伝わってきました。
 漢字が持つ本来の意味とは無関係に、その音だけを借りて日本の言葉を書き記したものが「万葉がな」です。例えば、ごミサの冒頭に会衆が唱える「またあなたとともに」を万葉仮名で表してみますと「末太安奈太止止毛仁」となります。この漢字の草書体をさらに崩して書くことによって「ひらがな」が生まれ、日本人の細やかな感情を書き表すことができるようになったことが、「枕草子」や「源氏物語」といった今に伝わる名作の誕生につながったのです。登場人物の心の機微を表すひらがな表現は、ときの一条天皇の心を捉えて離さなかったことがドラマでも描かれていました。

 次に「源氏物語」の主人公、光源氏の教育論に注目してみたいと思います(第二十一帖少女)。
 光源氏と亡き妻である葵の上の子、夕霧が12歳で元服を迎えました。貴族の子である夕霧はすぐにでも高い身分につけることができたのですが、勉学を身につけさせるために六位という下級の官位に留めて大学に入学させたのです。まだ幼い夕霧を高い位からスタートさせると学問が疎かになり、後々痛い目にあうに違いないという光源氏の親心でした。六位以下は昇殿が許されていない下級の官位であり、着衣の色も、五位は浅緋、六位は深緑と決められていました。夕霧本人は不満に感じ悔しい思いをすることもありましたが、しっかりと学び、見事な成績を修めて昇進することができたというストーリーです。
 紫式部の父親が長く六位に留まり官職に恵まれず苦労したことも小説に反映されていると思われます。我が子に敢えて苦労をさせるという、著者の教育論を見る思いがします。

 「教育する」は英語で"educate"=「e(外へ)+ ducate(導く)」です。子どもたちが神様からいただいた様々な能力に気づき、それを引き出すことが教育であるとの考え方です。

 ギフト"gift"は「贈り物」とともに「才能」という意味を持っています。
 世界中の子どもたちが、神様からいただいたギフトを生かし、神様の愛に包まれて羽ばたいてくれることを願ってやみません。

 今年も「心のともしび」ホームページを訪れてくださいましてありがとうございました。
 どうぞ佳いクリスマスと新年をお迎えください。
 人々が傷つき苦しむ戦争が早く平和的に解決されますように、災害や犯罪がなくなりますように
 祈りを込めて。

心のともしび運動 阿南孝也

*写真について*
 紫式部の墓所(京都市北区)で、紫式部が生まれ育ち、晩年を過ごしたと伝わる場所にあります。
 「ムラサキシキブ」:6月ごろに薄紫色の花を咲かせ、秋になると紫色の美しい実をつけることから、紫式部にちなんでこの名が付けられた日本原産の落葉低木です。