お言葉ですから

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 新しい年がスタートしました。この出発の時にあたり、シモン(後のペトロ)たち漁師が、イエスの弟子として召し出される場面に注目したいと思います。(ルカによる福音書)

 イエスがゲネサレト湖畔に立っておられると、神の言葉を聞こうとして、群衆がその周りに押し寄せてきた。(中略) 話し終わったとき、シモンに、「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」と言われた。シモンは、「先生、わたしたちは、夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」と答えた。そして、漁師たちがそのとおりにすると、おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。(中略) イエスはシモンに言われた。「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師となる。」そこで、彼らは舟を陸に引き上げ、すべてを捨ててイエスに従った。(5章1~11節)

 「お言葉ですから」という言葉に、シモンの複雑な気持ちを見て取ることができると思います。漁師としてのプライドもあったことでしょう。夜通し働き、疲労困ぱいでした。しかし、シモンは「お言葉です」とは言わず、「お言葉ですから」とイエスの言葉に従いました。
 そしてそのことが、生涯を決定づける出来事へとつながっていったのです。

 ここで「捨てる」という言葉に注目したいと思います。シモンたちは、舟や網を置いてイエスに従う道を選びました。私たちが新たな道へ踏み出すときに、捨てなくてはならないものとは何でしょうか。「生活のリズムを変えたくない」という気持ちや「プライド」が相当するのかもしれません。仕事を表す英語、"calling"や"vocation"は、神の招きに応えるという意味が込められた言葉です。シモンのように、自分の知識や経験に固執することなく、「お言葉ですから」と受け入れる、勇気と素直さを持つことが何より大切なことなのです。
 シモンたちが、「私」を基準とした生き方から、「イエス」を基準とした生き方へと導かれていった物語です。イエスに従う道を歩み始めた弟子たちを祝福するしるしとして、大漁という実りが与えられました。

 私たちも主の招きに応えて歩んでいくことができますように。
 今年こそ世界が平和で素晴らしい年となることを願い、祈り続けましょう。

心のともしび運動 阿南孝也