「主の祈り」は、イエスご自身が教えてくださった祈りです。
(マタイによる福音書6章9~13節)
「日ごとの糧」とは、文字通り「その日一日分の食べ物」のことです。聖書に精通していたユダヤの人々は、日ごとの糧と聞いて、次の聖句を思い浮かべたことでしょう。
貧しくもせず、金持ちにもせず わたしのために定められたパンで わたしを養ってください。
(箴言30章8節)
イエスの周りには、その日の食べ物に事欠く人が集まっていました。その日の食べ物や仕事が見つかるかどうか、不安の中で唱えられた祈りなのです。
日本では少子化の進行が緊急の課題となっていますが、世界全体としては人口の増加が続いています。世界人口が80億人に達した昨年、グテーレス国連事務総長は次のようなメッセージを出しています。
~~私たちが構築しようと努める世界に80億の人がいるということは、尊厳のある充足した生活を送る80億の機会があることを意味します。誰一人取り残さない、持続可能で包摂的な未来のために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ*」を完全に履行するという私たちの約束を新たにしようではありませんか。~~
ところが現実世界は、世界80億人全員が健康に生活できるだけの穀物が生産されているにも関わらず、8億人が飢餓に苦しんでいる世界です。飢餓の原因は、戦争や貧困、一部の国による富の独占といった人災が大きいのです。裏を返せば、人の手で改善できるということです。
マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」と言われました。科学"science"の語源は「知る」という意味の言葉です。世界の現状にもっと関心を持って行動を起こさなければなりません。
主の祈りには「私たち」という言葉が5回登場します。主語を明示する英語では"we,our,us"が計9回も登場します。一人で唱えていても「私たち」、すなわち全ての人が心を合わせて祈る祈りなのです。
全ての人々に「日ごとの糧」が与えられる世界を築いていくことができますように。 アーメン。
*「貧困をなくす」「飢餓をゼロにする」などの17の国際目標
心のともしび運動 阿南孝也