柳田敏洋神父(イエズス会)の著書『日常で神とひびく2』(ドン・ボスコ社)に、神父様がインドの修道院に滞在されていたときのことが紹介されています。ミサの中で、インド国歌の作者としても有名なタゴール作の「主よ、あなたへの賛美を奏でることができるように、私をあなたのリュート(中世の弦楽器)の一弦に加えてください」という聖歌をよく歌ったのだそうです。
柳田神父様は、私たちを弦楽器の弦に、そして神の心を弦楽器の空洞の胴に譬えて、次のように述べておられます。「弦は太さや材質によって音色や音質が違ってきます。一人ひとりが自分らしさを持っていて、適度な緊張(弦の張り具合)が美しい響きを奏でるために必要です。弦楽器は空洞の胴を持っています。この空洞の胴があるから共鳴して音が響くのです」
バイオリンの弦の材質は実に多様です。ガット弦は古くからあるもので、羊の腸を素材として作られており、豊かな音色を特長としています。またスチール製やナイロン製もあって、明るく澄んだ音、力強い音など、それぞれ音質に違いがあります。私たちは、神にかたどって創造されたかけがえのない弦であり、神の心と共鳴することによって、個性を発揮した美しい音楽を奏でることができるのです。
「二人または三人が私の名によって集まるところには、私もその中にいる」
マタイによる福音書18章20節
神は、弓に擦られることで小さな振動を発するに過ぎない私たちの営みを漏らすことなく受け止めてくださる方です。そして私たちが神からいただいている賜物を用いて、隣人となって助け合い、協力し合うことを望んでおられます。
隣り合った複数の弦を奏でることによって、単独の弦では実現できない奥行きのある和音やハーモニーを生み出すことができるのです。神はこの小さなメロディーを用いてくださり、神ご自身が「響かせる器」となって、名器ストラディバリウスをはるかに超えた天使の調べへと、昇華させてくださるのです。
神との共鳴で生まれた調べを基調として、周りの人々から世界の人々へ、心震わせる交流の輪が拡がってゆくことができますように。 アーメン。
心のともしび運動 阿南孝也