「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」(マルコ福音書1章15節)
ガリラヤで伝道を始められたイエスの第一声です。私たちが最初になすべきことは「悔い改め」であるとイエスは言われました。「悔い改め」は原語のギリシア語で「メタノイア」(メタ:移す、ノイア:視点)、すなわち物事を考える視点や立場を変えなさいという意味です。自己中心的な生き方を改めて、他者を中心に据えるよう促されたのです。
メタノイアは「回心」とも訳されます。新共同訳聖書英語版では"turn"という単語が使われています。「心を向ける方向を変える」すなわち、表面的なものではなくて、真に価値のあるものに目を向けるよう招かれているのです。
残念ながら、私たちの社会は、力のある者が自分たちの利益を優先し、その結果大勢の人々が苦しみ、疲れ、生きがいを見失っているように思われます。
イエスの時代も同じでした。一般大衆は、ローマ帝国とユダヤ王国から二重に搾取されて、苦しんでいました。イエスはナザレという辺境の地で育ち、漁師・羊飼い・日雇い労働者・寡婦・病気の人など、弱い立場に立たされた人々に寄り添い、彼らを癒されました。
教皇フランシスコは2020年8月の一般謁見で、「目に見えない『小さなウイルス』による感染症からの癒しと、社会の不正義という目に見える『大きなウイルス』から生じたパンデミックからの癒しのために行動しなければいけません。イエスは病者や貧しい人々、疎外された人々の中にいて、神の慈しみ深い愛を示されました」と述べられました。
2月22日は「灰の水曜日」です。この日から、復活祭に向けて心の準備を行う「四旬節」がスタートします。私たちの社会は、ウクライナ侵攻、世界各地での紛争、人権侵害、虐待などの不正義が横行し、主のみ旨とかけ離れた状況にあると言わざるをえません。
四旬節にあたり、一人一人の回心が、家族・社会・国家・世界の回心に繋がることを願ってやみません。
心のともしび運動 阿南孝也