9月は台風の襲来が多い月です。
1954年9月26日、青函連絡船が転覆し、死者が千名を超える大惨事となりました。当時は気象衛星もなく、台風の大きさや進路予測が難しかったのかもしれません。全便欠航していましたが、風が衰えたと判断した洞爺丸が函館港を出航。ところが思わぬ強風に見舞われて座礁し、その後転覆したのです。乗船していたストーン牧師(52歳)とリーパー牧師(33歳)は、パニックに陥った乗客を励ましながら救命胴衣の着用を手伝っていましたが、胴着を持たない乗客を発見したため、自分達の胴衣を譲り渡して亡くなったのです。救命胴衣を譲り受けて生還した人の証言によって、この出来事が公になりました。
二人の愛の行動は深い感動を呼びました。三浦綾子さんは小説『氷点』の中で、命を捧げた宣教師として描いています。 リーパー牧師の長男は、原爆を投下した米国人初の広島原爆資料館理事長に就任(2007年)して話題となりました。
旧約聖書に登場する勇者アブラハムやモーセたちは、神の呼び掛けに応えて、行き先も知らずに出発し、旅の途中で貴重な体験を積み重ねて行きました。
「自分たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表したのです。・・・彼らは更にまさった故郷、すなわち天の故郷を熱望していたのです」
(ヘブライ人への手紙11章13・16節)
二人の宣教師は、救命胴着を手渡すときに「私たちには行く所があるから大丈夫です」と話していたそうです。
与えられた人生を精一杯生き抜いた先人に倣い、どのようなときにも共にいて導いてくださる神に信頼して、天の故郷に思いを馳せながら人生を歩んでいきたいと願っています。
『みもたまも』 カトリック聖歌集2番
心のともしび運動 阿南孝也