教会の伝統にしたがって、聖金曜日と翌日聖土曜日のミサはありません。その理由から、祭壇には何も飾らず、十字架も、ろうそくも祭壇布も使用しません。この日は、イエスが担った人類の苦しみを、身をもって体験する聖週間(聖なる過越の三日間)の中で、特にイエス・キリストの受難と死を記念する日だからです。そこでこの日の典礼は,古代エルサレムの習慣から発展し、キリストの死の時刻に合わせた午後3時から、全て装飾を取り除いた祭壇の前にひれ伏し、悲しみと沈黙のうちに礼拝が始まります(また、この時刻・午後3時が相応しいとされていますが、現実的には難しい面が多く、夕刻以降始められるのが一般的です)。そして、ヨハネ福音の受難の朗読が読まれ、人類のすべての共同体のために共同祈願を荘厳に捧げます。それが終わると各人祭壇の前に準備された十字架に崇敬と賛美を静寂の中厳かに捧げたのち、主の祈りと昨晩仮祭壇に納められたご聖体を拝領(交わりの儀)して終了します。聖体拝領の後、伝統的に教会の中でイエスが死刑の宣告を受け、十字架を担ってゴルゴタの丘へ向かい、死んで墓に葬られるまでの出来事を辿った、キリストの受難の各場面を黙想しながら祈る「十字架の道行き」の祈りは、四旬節中、また聖金曜日の後にも祈ります。「十字架の道行き」の祈りをすることは、カトリック教会の伝統的な信心業の一つであり、世界中の教会の聖堂の中に壁掛けや教会敷地内の庭に15留のイエスの受難の絵画または彫刻を設置しています。また世界中の巡礼地を訪問すると、等身大の15留の"十字架の道行き"彫刻像を目にするでしょう。"聖金曜日にキリストは十字架上で死んで、墓に葬られた"それは、私たちの罪を赦し、罪を贖い、私たちを永遠の命に導くために、ご自身の命を捧げてくださったのです。