神さまの目線

毎月のお便りイメージ

 帰宅するために近くのバス停に行くと、ついこの間まで強い陽射しに照りつけられていた場所が、今はすっかりビルの影になっています。たとえ気温は高くても、陽の高さからは秋の気配が確実に伝わってきます。

 大学でイネを育てていた時は、田植から毎日のように変わっていく水田の様子に季節を感じていました。イネが小さいときは強い陽射しで暖められてお風呂のようだった水田の水が、イネが水面を覆う時期になってくるとひんやりと感じる日があります。その時は、まだ暑い日が続いている最中でも、「あっ秋が来ている」、と思わず声に出ます。

 植物は動物と違って動かない、と思っている人は多いと思います。イネも人間の時間感覚でみると動いているようには見えません。ところが、毎日のように刻々と変わっていくイネを見ていると驚くほど機敏な動きを見せます。植物は動けない代わり、周囲の環境の変化に合うように自分を変えていきます。植物はただ成長して大きくなるわけでなく、刻々と変化する環境に応答するために、実は相当忙しくしています。

 植物にも「時計」はあるし、「時」を刻む能力も備わっています。ひょっとしたら植物にも時間感覚があるかも、などと妄想していると、私たちを見ておられる神さまの視線が私たち人間の視線とは違うことに思い至ります。神さまの目は今の私たちだけでなく、過去と将来の私たちも同時に見ておられます。「家を建てる者の退けた石が隅の親石となった。これは主の御業わたしたちの目には驚くべきこと。(詩編118:22-23)」の言葉は、そのことを教えてくれているようです。

 「神は見ておられる」と言われると、なんだか見張られているような気がしてきますが、神さまが今の私だけでなく私の人生すべてを見ておられると意識したとたんに見守られているような気がしてくるから不思議です。

 季節の変わり目は、体調を崩しやすいと言われています。酷暑の夏が突然終わって、きっと体もびっくりしているでしょう。どうぞ、お気をつけてお過ごしください。