教皇フランシスコ来日から3年を迎えます。2019年11月24日に爆心地の長崎、広島から全世界に向けて、核兵器のない世界を築くようにとの平和メッセージを発せられました。25日には教皇ミサが東京ドームで行われ、校長だった私は、生徒たちと共にミサに与ることができました。
ところで、教皇様の来日最初のメッセージは、23日に羽田空港に出迎えた高校生たちに対するものであったことをご存じでしょうか?
後日教皇様は、その時のことを、次のように話されました。
「最初のメッセージは、空港で出会った若者に伝えました。多くの青少年が迎えてくれました。その中の1人が私に『若者のためにメッセージをお願いします』と言ったので、彼の目を見て答えました。『歩みなさい。いつも歩みなさい。そして、転びなさい。つまずいては立ち上がることを学び、こうして人生が発展していくのです』」 。
教皇様からの若者へのメッセージは、「歩みなさい」と並んで「転びなさい」でした。転ぶことは単なる失敗ではなく、立っているときには気づくことの出来なかった、かけがえのない大切なものが見えてくることを教えて下さったのかもしれません。
この教皇様の高校生へのメッセージは、あまり報道されませんでした。ハプニング的なものだったのかもしれません。それだけに、教皇様の若者への思いが色濃く反映されたものだと思うのです。
教皇来日直後から、コロナによって世界は一変してしまいました。教皇来日のテーマであった「すべてのいのちを守るため」は、はからずもコロナ禍を預言したものとなりました。
「私たちはみな同じ船に乗った仲間です」。教皇様のこの思いを世界中の人々が共有することを通して、侵略、内戦、環境破壊、富の不平等が解消されて、神が愛ゆえに創造されたすべてのいのちが守られる世界の誕生を祈ります。
歩むこと、そして転ぶことの大切さを知った若者が、国や民族の違いを乗り超える力となってくれることを願ってやみません。
心のともしび運動 阿南孝也