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神を賛美する学問へ

毎月のお便りイメージ

 桜便りも聞かれる待望の春が訪れました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 カトリック教会の暦の上で今年の復活祭は4月20日(日)ですので、信徒は今、節制と愛の行いに努める四旬節を過ごしています。

 さて、今月は「学問」について少しお話ししてみたいと思います。

 世界大学ランキング(研究力・論文引用数など)で常に上位を占めるハーバード大学やエール大学に、創立以来「神学部」があることをご存じでしょうか?パリ大学(世界最古?12世紀創立)をはじめ、長い伝統を誇るオックスフォード大学やケンブリッジ大学等に共通する特徴は「神学部」を持っていることです。
 大学設立の目的が、「聖書」と「大自然」という、神が与えてくださった2冊のテキストに隠された創造の神秘を探ることにあったからです。「神学部」と共に欠かせない学部が「法学部」と「医学部」でした。

 法 "law"は、神と人間との契約(旧約・新約)を研究する学問として、また医学は「人体を読み解く」ことを通して神を賛美する学問としてスタートしたのです。

 地動説という画期的な理論を打ち立てたコペルニクスは「神学部」で学び、修道院で教え培われてきた「自由七科」(リベラルアーツ)と呼ばれる教養を学びました。
 彼は「司祭」であると同時に「医者」「法学者」でもありました。科学"science"の語源は「知る」という意味の言葉です。神が創造された大自然の神秘を知るための学問である「自然科学」は神学の一領域としてスタートし、大きな発展を遂げていったのです。

 日本の大学は事情が異なる中でスタートしました。近代国家への変革(富国強兵、殖産興業)を急いだ明治政府は、日本最初の近代的な大学である「東京帝国大学」(現東大)設立にあたり、神学部ではなく理学部(後に工学部も)を設けました。「神学なしの工学あり」大学は、欧米にはない日本独特の制度だったのです。

 「神学」に縛られることなく、実利的な「科学技術」の研究に力を入れた結果として、急速な近代化の実現ができたのかもしれません。

 遺伝子治療、地震予知研究、環境保全、宇宙開発・・。科学の進歩が、すべての人の尊厳が守られる社会の実現に寄与するものとなりますように。

 特に近年著しいAI技術の進展が「バベルの塔」(創世記11章)のようにではなく、聖霊降臨の折の「彼らが私たちの言葉で神の偉大な業を語っているのを聞こうとは」(使徒言行録2章)のように、世界中の人々が神の御業を心に響く言葉として捉える一助となることができますように。

 学問がそれぞれの垣根を越えて、人の力を超える偉大なかたへの畏敬の念を忘れることなく、人々の幸せ実現に向けて深められていくことを願ってやみません。

心のともしび運動 阿南孝也