3月に入りました。少しずつ日差しが明るくなり、さまざまな生命が動き出す季節ですね。
先月は記録的な大雪の被害に遭われた地域が多く、困難な生活を強いられた皆さまのために心合わせてお祈りしています。
さて今月は、皆さまよくご存知の「奇跡の人」について少しお話ししたいと思います。
人と人との出会いは不思議なものです。生涯の友は人生の宝と言われます。
ヘレン・ケラーとアン・サリバンとの出会いもその一つに違いありません。
生後19か月で熱病のために、見えない、聞こえない、話せないという三重苦を抱えたヘレンが、サリバンとの出会いによって心の目が開かれた話はあまりにも有名です。
皆様は、ヘレンの閉ざされた心に言葉という光を届け、神の愛を伝えたサリバンもまた、視覚に障がいを持っていたことをご存知でしょうか?
サリバンは貧しい家庭に生まれ、3歳で全盲に近い状態となりました。病によって家族まで失ったサリバンでしたが、有力者の支援によって14歳でパーキンス盲学校に入学することができました。その後、手術で僅かに視力を回復し、読み書きを学んだサリバンは、校長の勧めによって、自活のために6歳の少女ヘレンの家庭教師となったのです。サリバン20歳の時のことでした。
1962年大ヒットした映画「奇跡の人」は、より多くの人がヘレン・ケラーの生涯を知る機会となりました。
ところで、「奇跡の人」とは誰のことだと思われますか?日本では、「ヘレン・ケラー」=「奇跡の人」と誤解されがちですが、原題は"The miracle worker"(=奇跡の働き人)であり、家庭教師であったサリバンのことだと分かります。この映画は主演女優賞・助演女優賞を受賞しましたが、サリバン役が主演、ヘレン役が助演で受賞していることからも明らかです。
サリバンは盲学校時代に、裁縫を教えていたローラという50代の女性と出会いました。幼少期に視覚と聴覚を失い、盲学校で点字や指文字を習得したローラと指文字で会話することに成功していたのです。この経験がヘレンの教育に生かされたことに、神の計らいを感じずにはいられません。
サリバンは初めてヘレンと出会った3月3日(ヘレンは「私の誕生日」と呼んでいたそうです)に、お土産の人形を手にするヘレンに自らの手を握らせ、"DOLL"と指文字を綴りました。
こうして2人の50年にわたる交流がスタートしたのです。サリバンの忍耐強く愛に満ちた導きによって、ヘレンは言葉と出会い、さらに神に愛された存在であることに気づくことができたのです。
「どんなささやかな成功も 他の人の目には触れない 挫折や苦難の道を経ているものなのです」
= アン・サリバンの言葉 =
カトリック教会では、ご復活祭前の「四旬節」という期間が灰の水曜日(今年は3月5日)から始まります。節制と他者への愛に努め、祈りのうちに神の愛を知る恵みの時になりますように。
心のともしび運動 阿南孝也